前々回から前回までの投稿が、三カ月以上開いたのに、今回は二週間くらいでの投稿になりました。それはなぜか。
理由は二つ。
一つは、400ちょいのページ数の一冊作品であること。当然ですが、数巻にまたがる作品よりは早く読み終わりますね。
そして、二つ目の理由「めちゃくちゃ面白かった!」から。この作品に関しては、こちらが強いんじゃないかなぁ。一気に読んでしまいました。そのくらい面白かった。
ということで、今回は、ただ今、書店の歴史小説・時代小説ランキングで一位になってたりする、管理人初読みの作家 箕輪諒(みのわりょう)さんの作品「最低の軍師」です。
管理人は知らなかったんですが、史実としてある「臼井城攻防戦」を描いた作品で、その時に活躍した、これまた実際にその存在の記録はあるらしい「白井浄三入道」という軍師を主人公にしたお話しです。
永禄八年(1565年)の11月からスタートして、そこから半年くらいの間の話なので、この作品でも敵として登場する上杉謙信が35歳くらいで、武田信玄が44歳、織田信長が31歳、豊臣秀吉が28歳、徳川家康が22歳くらいという感じで、そうそう、この年は、山田風太郎作品で度々登場する新貴山の魔王 松永弾正久秀が、三好三人衆らと共に将軍 足利義輝を殺害するっていう暴挙に出た永禄の変が発生した年でもあります。
臼井城というのは、千葉県の北部、市川、船橋をもうちょっと東に行ったところにあって「もうちょっと北はもう茨城じゃん」って位置の城で、当時北条が掌握していた関東を攻略するのに、「こんなに東の城って要地なのか?」って思いながら読んだんですが、房総をどうにかするのには、まあ入口になるから大事なのかって納得。
内容についてはネタバレになるのであんまり言えないのですが、謙信がまだ上杉輝虎を名乗っていまして、輝虎の考える”義”に則って北条を倒し関東を平定してやるぜ、というのが入口。”義”がなんであるかは読んで確認していただきたい。最終的にはこれもキーワードになったりします。
臼井城は、北条傘下にあって、そこに北条の援軍として派遣される北条家の家臣 松田孫太郎と、そこにフラっと現れる白井浄三という謎の人がW主演的に主人公になります。
あとは、もう、臼井城が上杉軍に目をつけられて、臼井城側の人達が「やるの?やらないの?どうするの?いつやるの?今でしょ」的にすったもんだしつつ、最後には、ああ…って展開なわけですが、もうそのあたりは読んでみてのお楽しみです。
管理人は、文学部とか出てる人ではないので、難しい解読はしないっていうかできないんですが、まあ、とにかく、内容が「マジで本当にあったんじゃないか」「この人物相関関係って、本当にそうだったんじゃないか」感が読み終わった後にすごい。
いや、史実として「臼井城攻防戦」はあって、結果もこの作品の通りのようだし、作品の途中で、資料として残っている文献の原文とその訳が書かれているのを見ると、この作品の中で発生したイベントは史実通りだし、登場するメイン人物も実在した人達。
ただですね、登場する人物の相関関係については、箕輪諒先生のイマジネーションがイカれてるんじゃないかと思えるくらい(相当によいって意味で)炸裂していて、とても因縁ありすぎて、最後の最後までやられます。
大事なことなので二回言います。最後の最後までやられます。
主人公の白井浄三入道というのは、その存在の記録がこの臼井城攻防戦にしかないらしく(生年も没年も不明でとにかく情報がないみたい)、本当に伝説化しているらしいんですが、こういった物語にするにはうってつけ。って読んだ後だから言える話。
読み終わった後、箕輪諒先生はよくぞこのニッチなヒーローを見つけ出して、各史実の点をみごとに線にして、とんでもない作品にしたなぁと、ただただ、ため息が出ました。
しかも、ほら、読んだ人間が「ヒーロー」とか言っちゃうのに、最終的に「最低」に納得することになるなんて、もう、最後は読んでて泣けました。まじ切ない…。
作品の風味としては、和田竜先生に近い感じで、司馬遼太郎先生とか山田風太郎先生のような劇画感というよりは、青年誌、少年誌的な感じではありますが、トリックが凄くて、作中で何度か「ええ!?そういこと!?」ってなります。
ああ、後はあれですね、管理人の故郷 越後の上杉謙信が敵として出てくるんですが、これが軍神感が凄くて、上杉推しの管理人としてはとても気持ちがよく、それでいて、上杉軍のヤバさについても新たに知見が得られて、その点でも楽しめたところがあります。
また、管理人がこの作品の前に読み終えた「国盗り物語」に出てくる「将軍が足利義輝から義昭に変るまで」や「謙信の関東平定」が微妙に絡んでくるので、国盗り物語のスピンオフ的に読むことができたのも、タイミング的には楽しめる要素だったかなぁと思います。
真面目なところでは、当時の軍師というのがどういう感じだったのか、また、浄三がやっていたような仕事が、当時、どう人々に捉えられていたのか、というあたりも勉強にもなりました。
あまり有名でない史実らしく、ネタバレにならないように内容的なことはこれ以上言わないほうがよいと思うので、そろそろ締めにかかりますが、とにかくこの作品は面白かった。
きっと、そのうち映像化もされると思います。尺的にも映画とかにするのにちょうどよさげな気がするし。
但し、一点だけ問題があるとすればアレかと思います。防戦時に用いたあの戦術…。
あそこだけは、そのまま描くとしてもオブラートに包んで欲しいですね。
ということで、とりとめのない話をぐだぐだと書いてしまいましたが、とにかくこの作品は面白い。ページ数的にも一冊完結ですし、難しい部分もなく、読みやすい作品だと思うので、是非、読んでいただればと思います。
最後に、この記事の中で、管理人がサラッと書いてしまったことも、白井浄三入道を最低の軍師たらしめたことに関わる記述があるんですが、それは、作品を読んでからのお楽しみということで。すごくひとこと書きたかったんですが、書くのやめました(笑)。
是非読んでみてください。おススメですよぉ。
歴史には浪漫がある。
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