日本史最大のクーデターともいわれる本能寺の変で諸説ある「実行理由」の一つの解として非常に納得できるうえに明らかにされていくその理由に涙せずにはいられない「桔梗の旗 〜明智光秀と光慶〜」

谷津矢車

こんにちは。

日々のコロナ感染者数報告が減少傾向になり、にわかに東京の非常事態宣言解除の気運が高まりつつある今日この頃ですが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。(これを書いていたらちょうど解除になりました)

管理人は相変わらずステイホームを決め込んで、こうなったら意地でも感染を回避してやるぜという気持ちでいっぱいでして、引き続き、自主的にステイホーム、つまり外出自粛(普通にそう言え)をしていく気満々なのですが、徐々に出社する必要が出てくるのだろうなぁと思っております。

さてそんな中、やや管理人の読書ペースが鈍っていたところに、突如現れたのが、今回読了した作品、谷津矢車さんの「桔梗の旗 〜明智光秀と光慶〜」です。

突如現れた、というのは、実は管理人、違う作品を読んでいる最中だったのですが、訳あって外出した際に、本屋さんにフラッと立ち寄ったところ、本作が目に飛び込んできたんですよね。

「あー、そういえば、谷津矢車さんが新しいの出してたな」というのと、まさにいまNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で明智光秀がホットなので、ちょっとパラパラと見てみたところ…「な、これ、光秀が主人公じゃないじゃん。息子が主人公!?」というあたりで、息子の光慶(みつよし)に関する知見が全くない管理人のテンションが一気に上がり、さらに、その光慶が既に11歳と冒頭で言われていることを考えると、光秀がそこそこの年齢のはずで、だとすると、Xデーが割と近いから、これはもしや、息子の目線から見た本能寺か!?面白そうじゃないかぁ、と心奪われてしまい気がついたらレジでお会計をしてたという次第。

しかも、帰宅後、続きが読みたくて、読んでいた他作品を途中にしたまま、本作を読み始めてしまい、購入翌日に読み終えるという管理人史上最速での読了となりました。

なので、つまり、どういうことかというと、めちゃくちゃ面白かった。いや、マジで面白かった。ページ最下部の評価表の「管理人満足度」の項目に初の★5をつけました。

いやぁ、管理人、文庫でない作品を初めて買いました。重くて持ち歩きに不便なのと、ちょっと高価なので、これまで文庫本で探してばかりいたんですが、本作は冒頭を読んじゃったらもう文庫本化を待ってられなくなり、結果、買って正解。待たなくてよかった。

ネタバレしない程度にうっすら内容をお話しすると、まず、主人公は光秀ではありません。

光秀の嫡男である光慶、と、もう一人だなぁ。彼も主人公の一人と呼んでよいでしょう。誰かは言いませんが。その二人が主人公。光慶でないもう一人は、後半にそれがわかるはず。

その二人の目から見た明智光秀や織田信長らの姿と、「本能寺の変」に向かって突き進んでいく、つまり明智家の運命が行き詰まっていく様が、悲しくも残酷に描かれます。我ながら、めっちゃざっくり。

ただ、ほら、あんまり言えないのですよねこれ。
「本能寺の変」やそれに至る話というのは、有名過ぎておおよそ誰もがわかっているわけで、本作はそれを別の角度から見つつ、諸説ある「織田信長をやったのは本当に明智光秀なのか?」とか「黒幕はだれ?」とか「謀反を起こした理由は?」とかに対して、一つの解を示すのか示さないのか、も実はあんまり言いたくないと思うわけです。それすら読み手のワクワクを奪っちゃうのではないかなと。なので、そのあたりも内緒です。
ただ読了後の満足度はきっと高いと思います。少なくとも管理人はめちゃ満足できました。★5個つけちゃうくらい。

管理人、よく考えたら明智光秀の息子のこと(光慶や自然)とか全然知らなかったのですよねぇ。
光秀をある程度描いた作品も、司馬遼太郎先生の「国盗り物語」くらいしか読んでおらず、映像作品でも、光秀ってあまり深掘りされてない印象。
実際、史料が少なく謎な部分が多いとされているみたいなので、フォーカスしづらかったのかもしれない。光秀がそんな状態なもんだから、これまでは、そもそも息子の存在を気にもしていなかった。
ただ、本作を読み始めた途端「そうだ!光秀の息子なら、本能寺の変に至った真実を知ってんじゃないか!?それが描かれるのか!?この作品は!?」となりまして、ただ、直後に「あ、この子じゃアカンかも…」となるんですが、まあ、それがどういう意味で、結果どうなるかは乞うご期待ということで、本作はそれもそうだし、息子 光慶やその他の人物についてもめっちゃ描かれるので、光秀の家族や明智の一族に関しての知見が得られてる点でも非常によかったです。
どこまでが、史実通りなのかはわからないですが、きっとそこそこ史実通りなんだろうと勝手に思ってます。

しかし、谷津矢車さん凄いなぁ。
光秀の息子やもう一人のある人物を使って、未だに謎が多いとされている「本能寺の変」と明智の一族に関しての一つの解を見事に作りあげてる。
もう本作を読んだ後は、これが真実なんじゃね?と思えちゃう。
最初からぐっと興味を引きつけといて、途中、ダレることなく、逆にクライマックスに向かうにつれて、どんどん先を知りたくなるし、見事にフラグ回収してくれて、クライマックスはもうなんというかグッときましたね。まあ、だから、一気に読んじゃったわけですけど。

谷津矢車さんの作品は、これが三作目なんですが、管理人は本作がダントツに一番。
次が「曽呂利 秀吉を手玉にとった男」で、次が「某には策があり申す 島左近の野望」かなぁ。
本作は、いまNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で光秀ネタがホットなのがバイアスかかってるかもしれないですが、それを差し引いても非常によかったと思います。

まあ、どうしても、NHK大河ドラマ好きの管理人としては「麒麟がくる」のキャストをやや想像しながら読むことにはなってしまったんですが、ただ、主人公が光秀じゃない本作は、登場人物があまり「麒麟がくる」のそれと被らない。ドラマのほうは、今はまだ光慶がいないので、この後、登場するのだと思うんですが、果たして誰が演じるのかなぁとか、その他の人物も含めてすごく楽しみ。

あー、ただどうかなぁ。「麒麟がくる」で盛り上がっている方で、「本能寺の変」をあまり詳しく知らない方(そんな方いますかね?)は、本作を先に読んじゃダメかもしれない。
そんな方はそうですね「麒麟がくる」が終わった後に読みましょう。本作を読んでしまうと「麒麟がくる」のこの後を知ってしまうので。

本能寺の変をよく知ってる方は、どのみち「麒麟がくる」でも「果たしてどの解釈で本能寺の変を描くかな?」なんてことを考えながら観ているのだと思うので、本作を先に読んでもらって全然構いません。むしろ読んだ上で「麒麟がくる」の解釈との違いを楽しむのもよいかも。
何かと不運なNHK大河ドラマ「麒麟がくる」ですが、この後、中断期間に入るようですし、その間に読むというのもアリかと思いますね。

しかし、テレビドラマや映画のタイミングに合わせて、こういうスピンオフ的な作品を読むというのはなかなかよいですね。映像の中に出てこない別のところで同時期に起こっているであろうことを妄想することができるから、どちらもより楽しめる気がします。この機会に、他の明智光秀作品も読んでみようかな。

というわけで、また今回も余計な話が長くてさっぱりレビューの体をなしてない上に、なんだかやたらと「麒麟がくる」に絡めて長々と話してしまいましたが、光秀と光慶の親子関係、光秀・光慶親子ともう一人の主人公の関係などなど、様々な人物達の思惑が錯綜しつつ、誰もが知る「本能寺の変」に至るまでを、本当にそうだったんじゃないかと思わせてくれる本作「桔梗の旗」。是非、読んでみてください。超おすすめです。

映画化とかしないかなぁ。尺的にも内容的にも面白いものができると思うんだが。

歴史には浪漫がある。

ノンフィクション度
3.5
奇想天外度
0
サムライ度
4.5
忍者度
0
エロ度
0
管理人満足度
5
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