悲しくせつない 伊賀忍者 笛吹城太郎と根来忍者7人の忌まわしき戦いを描いた「伊賀忍法帖」

山田風太郎

山田風太郎の忍法帖シリーズの一つ。
管理人は、初期の作品なのだと思っていたが、実際はかなり後期の作品。
初作の甲賀忍法帖からは8年くらい経って発表されたもの。

忍者といったら、まずは「甲賀」「伊賀」を思い出すくらいなので、まあまあ甲賀忍法帖テイストのものかと思いきや、全く違うのでご注意を。
エロさ、グロさが尋常じゃないレベルだし、内容そのものが最初からつらくてなかなか悪趣味な作品。
お子様には間違っても読ませられません。

実在した戦国武将 松永弾正(まつながだんじょう)が、主君 三好義興(みよしよしおき)の奥さんである右京太夫(うきょうだゆう)を気に入ってしまい、どうにかならんかと思っていたところに、果心居士(かしんこじ)という怪しい幻術師 爺さんが近づいて、「私がどうにかしてみせますよ、ふっふっふっ」というのが始まり。(果心居士って、記録上、実在したことになってるんですね!?怪しいらしいですが。完全に架空の人かと思ってました。)

この果心居士が「淫石」なる、文字からして怪しい石を作って、右京太夫に飲ませればイチコロだ、ということで、果心居士の弟子みたいな7人の根来(ねごろ)忍者僧に、その「淫石」作りをさせ始めるところから悲劇が始まります。

「淫石」って…。
もう見るからにおかしな作り方しそうですよねぇ…。
実際、相当イカれた作り方をするんですが…。

とばっちりを受けてしまうのが本作の主人公 笛吹城太郎(ふえふきじょうたろう)。
そのとばっちりから、笛吹城太郎と7人の忍者僧の戦いが幕を開けるわけです。

ここまでの話だと、エロ度はまあまあありそうで、それ以上はそうでもなさそうな気配を見せますが、実際は相当壮絶な内容でして、どういう発想だとこういうことが考えられるかなぁってくらいイカれた内容になってます。
さすがの管理人も、この作品はちょっと吐き気を催すレベルでした。
(この他にも、時々、極端にヤバい作品が山田風太郎にはあります)

ただねぇ、それでいて、1567年の奈良東大寺の焼失とか、松永弾正と三好義興の確執を微妙に物語の中に絡めてくるあたりが、さすが山田風太郎でして、歴史浪漫感を出してくるのですよねぇ。

そんな管理人が驚いたのが、この作品が1982年に角川で実写映画化されていたこと。
主演は、当時、角川映画といえばの、真田広之さんと渡辺典子さん(当時の売れっぷりは半端なかったですねぇ。「カムイの剣」の声優でも共演してなかったかな?)。
「ああ、城太郎とアレがそうなるのかぁ」というのは想像に難くなかったのですが、「内容はどうすんのよ!?」というのが疑問でした。
果心居士と7人の根来忍者僧の使う忍術と、その所業が尋常ではなく…。
原作のままでは、とてもじゃないですが、映像化してはいけないと思えるので。

で、観ました。たまたま、JCOMの時代劇チャンネルでやっていたので。
エログロは見事にないものになってました(笑)。
そりゃそうだ。あれは、そのまま実写化したらR指定必至だし、渡辺典子さんはキャスティングしちゃいけないことになるはずなので。
ただ、松永弾正役の中尾彬さんとか、漁火(いさりび)役の美保純さんとかはなかなかハマっていたし、果心居士の異様さ、この作品そのもののの持つ異様さの再現度はなかなかよかったと思います(VFX的なものは当時のですからそれなりです)。
まさに山田風太郎作品という感じの、終始今にも雨が降り出しそうな雲があり、空が暗く、妖しい雰囲気はよかったと思います。

ということで、最後は映像作品のレビューになってしましたが、原作のほうは、かなりエログロ度の高い作品です。が、興味を持った方は読んでみてください。
明らかなフィクションではありますが、全般的に史実に絡めたところはあるので、その点ではなかなか浪漫がなくもないです。
食わず嫌いはよくないですしね(笑)。

歴史には浪漫がある。

ノンフィクション度
1.5
奇想天外度
5
サムライ度
1
忍者度
5
エロ度
4.5
管理人満足度
3
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