エグいくらい謀略だらけでどんどん鬱な気持ちになる中で北条政子の弟義時に光を見たかと思いきや案外そうでもなくて結局地獄で「鎌倉燃ゆ」

吉川永青

こんにちは。

前回の投稿からとんでもなく時間が経ってしまいました。
4か月ですか…。
仕事に関わる書籍を読む必要がありまして、なかなか趣味の読書には時間が割けず…。

投稿をせずにもたもたしているこの4か月のうちにとんでもないことが起こりました…。
安倍元首相が銃撃されて亡くなられました。
政治は全く無知の人間でして、ここで多くを語ることはできないのですが、長きに渡り首相として日本のために尽力していただいた方が、ああいう形で命を落とすというのは本当に残念でなりません。
今の日本でああいうことが起こるとは…。
それによって噴出した統一教会の問題はあるものの、まずは、安倍元首相のご冥福をお祈りいたします。

そして、コロナです。
せっかく一時期収まっていたのに、第7波ということでまた増加しています。
しかも、一日の感染者数は、連日、記録を更新するレベルで…。
身近な人の感染も多く、もう、管理人が感染するのも時間の問題かもしれません。
可能な限りの対策をおこないながら、日々を過ごしたいと思います。
とはいえ、今年の春以降、佐賀、新潟、群馬、大阪、三重と、管理人としては人生史上最も短期間でいろいろな土地への移動を行っておりまして…。
早く、コロナを気にせず、外出できるような生活に戻りたい…。
気をつけたいと思います。

さて、そんななか、かなーり長い時間を空けてしまいましたが、一冊読み終えました。
実は、読み終えたのは、結構前なんですが、なかなか記事を書く時間がとれなくてですね…。
本職の仕事が相変わらず忙しく、休みも休めない日々が続いてまして、ブラックな会社かと言われると、社員にブラックな思いをさせられないので、経営陣の稼働がブラック気味というかなんというか。
まあ、やらされている休み無しではなくて、趣味と仕事の境がない感じでもあるので、大変ではありますが、未来を楽にするために頑張っているつもりです。

前置きが長くなりました。
今回読了したのは、少し前にわりと歴史小説・時代小説界隈で話題になった気がする、実力派作家陣によるアンソロジー「鎌倉燃ゆ」です。

ただいま絶賛放映中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の予習になりそうだし、このブログでも何冊か紹介している谷津矢車先生、秋山香乃先生も名を連ねているということで買い置きしていたものを手に取りました。

あまり短編モノは好まない管理人ですが、結果、めっちゃ面白かったです。
アンソロジー(異なった作者の作品を集めたもの、だそうです)、悪くないなぁ。

全編を通じて扱われる時期は、源頼朝が北条政子を正室にして平家討伐に向け立ち上がったくらいから、3代目将軍実朝(さねとも)の死まで。
この期間を、複数の作家先生方が、複数の人物を主人公にして話を紡いでいきます。

ざっくりですが、各章の作者と概要を以下に。

「水草の言い条」谷津 矢車
「鎌倉殿の13人」で小栗旬くん演じる北条義時が主人公です。
頼朝、頼家、実朝と将軍源家三代に仕えた義時にまつわるエピソードが描かれます。
ということは、つまり「鎌倉殿の13人」もそこまでのお話になるわけですね。
「言い条」という単語がわからなかったんですが、「言い分」ということらしいです。
なるほど、「水草の言い分」ということか。
誰が「水草」かは、本作を読んで確認してみてください。
この短編で、「鎌倉燃ゆ」全体の概況を把握することになるんですね。
結果、義時は成功したと言っていいんでしょう。(と理解した)

「蝸牛」秋山 香乃
「蝸牛」と書いて「かたつぶり」と読むことを知りました。
(源)義経が愛人にしちゃう静御前が主人公。
「鎌倉殿の13人」では、石橋静河さんが静御前を演じましたね。(そういえば、「鎌倉殿の13人」はキャストを役名にわざと寄せて選んでるところありますよね、狙ってると思うんだよなぁ)
義経との馴れ初めから、伝説となっている身重の状態での鶴岡八幡宮での舞までを描きます。
婚約者であった(木曽)義高を失った大姫(頼朝と政子の娘)との関わりを含んだ内容。
秋山香乃先生らしい、静御前、郷御前(比企能員の娘で義経の正室)、大姫、政子という女性目線の心情が描かれた短編。
静御前が産んだ子の結末を知って本当に辛かった。

「曾我兄弟」滝口 康彦
頼朝が行った富士山の裾野での鷹狩で敵討ちを果たした曾我兄弟の話。
有名なエピソードらしいんですが、管理人、本作でやっとある程度把握できました。
「曾我兄弟の仇打ち」は日本三大仇討ちの一つなんだそう。
ちなみに他の二つは、「赤穂浪士の討ち入り」と「伊賀越えの仇討ち」だそうで、実はこの三つが「一富士、二鷹、三茄子」の語源説があるらしい。
しかし、最後に明らかになる真の黒幕に驚いた。
諸説あるうちの一つなんだと思うけど、このあたりからミステリー感が出てきました。

「讒訴の忠」吉川 永青
「讒訴」と書いて「ざんそ」です。
梶原景時が主人公。「鎌倉殿の13人」では、中村獅童さんが演じてます。
義経を討つ際に暗躍し、頼朝に頼りにされた奸物ですが、結果、この人もこうなってしまうのか…と、この時代の情勢に呆れてしまいました。
しかも、討ったのはまたしても…なんですよねぇ。
この後の本作が怖くなっていきます。

「非命に斃る」高橋 直樹
主人公は頼朝の嫡男頼家です。
「鎌倉殿の13人」では、金子大地くんが演じてて、本作での頼家同様、困った子感強し。
この章で、13人の合議制がなされます。
本作で、いつも時政お父ちゃんとやりあっていたあの方が討たれて、その一族が滅亡します。
頼家は父頼朝を目指したものの残念ながらそこには至れず、最後は一時は味方だった彼に…。
頼家に最後まで付き従った下僕の藤蔵が出身地を明かすエピソードで、おっ!ってなりました。

「重忠なり」矢野 隆
「鎌倉殿の13人」で女性支持ナンバーワンっぽい中川大志くんが演じる畠山重忠と、再び登場の北条義時が主人公の短編で、この「鎌倉燃ゆ」の全作品中で最も最悪な作品。
あの方とあの方の策略によって、重忠が冤罪となり、冤罪と知りながら対処を強いられる義時を描きます。
重忠の凄さがわかる一方で、重忠を謀るあの方とあの方に対しての怒りがマックス。
まもなく「鎌倉殿の13人」でもその時がやってくるんじゃないかな。
ここで描かれた内容と同じ描かれ方をした場合は、あの方たちは中川くんファンに寝首をかかれないように注意しないといけないんじゃないかと心配になるレベル。
読んでいて吐き気を催すレベルでした。
非業の死を遂げる畠山重忠の振る舞いは伝説になるに相応しい勇壮たるもの。
北条時政など足元にも及ばない。(あ、言っちゃった)

「八幡宮雪の石階」安部 龍太郎
「石階」と書いて「いしばし」と読むんですね、知らなかった…。
頼家の後を継いで三代目将軍となった実朝が主人公で10数ページの短編。
実朝にまつわる有名な三つのエピソードのみにフォーカスしたもの。
子供のいなかった実朝の死によって、源氏将軍は終わり、四代目から藤原姓になります。
実朝の死も諸説あるらしく、本作はその一つを示唆した終え方をしてると思うんですが、黒幕は、まさかあの人じゃないですよね?
怖すぎるんですが…。

以上の7作品です。

「水草の言い条」「蝸牛」「讒訴の忠」「重忠なり」は、この「鎌倉燃ゆ」のための書下ろしだそうで、その他の作品は、それぞれの作家先生の過去作品から切り取ったもののようです。
ただ、それぞれの作品間での齟齬のようなものはなく、ある程度、時系列に沿って作品が並べられているので、スーッと読み終えることができました。

そうそう、本作でも「鎌倉殿の13人」でも、北条義時とともにずっと居続けるのが、義時のお姉さん政子なんですが、政子のイメージは、各作品毎に若干違った感じがしました。
全般的には、前回読んだ永井路子先生の「北条政子」の政子に近いイメージなんですが、作品によっては悪女感がありました。

この時代に関しては、まあもうなんですかね。
「鎌倉殿の13人」を見ている方はわかると思いますが、もうこの時代は異常ですよね。
「鎌倉殿の13人」は毎回誰かが死んでいくんですが、本作でも同様で、もう訳がわかりません。
謀略だらけの中を生きていくってどんな心情なのか。
ただ、まあ、人間の歴史というのは、ずっとこんなことの繰り返しなんじゃないかと思わなくもなく。
ここから、徳川家康が穏やかな時代にするまでは、日本はずっと内乱を繰り返していたわけで。
そう考えると、徳川家康はやっぱりすごいなぁと思います。好きではないんですが。

おー、そうだ。
この後に、南北朝、戦国時代と続くので、それを想って読むのも非常にいいと思います。
実際、管理人「この後に太平記かぁ」と思いながら読んでいた部分もあります。

さて、管理人、「鎌倉殿の13人」の予習として本作を読んだわけですが、非常に予習になっていてよいですね。
当然ながら、「鎌倉殿の13人」の先のストーリーを知ることになるわけですが、ドラマのほうは、やはり情報量が多くて、文章だけでは足りない部分をよくも悪くも補ってくれるのと、多少違った解釈なんかもあって、それを気にしながら見れるのも楽しいです。
登場人物がめちゃくちゃ多いうえに、各人物の関係性があっという間に変わってしまうので、先に情報を得ておかないとドラマのほうはついていけないかもしれないんですが、そういうことがなくなります。

なので、次々に発生する悲劇も、事前に心の準備をしながら見れるわけですが、そうでない方は、きっとびっくりしながら見てるんでしょうね。
このところはずっと酷くて、最初の頃のほんわかムードはどこいった、という感じ。
そうなっちゃうのかなぁと思っていたら、やっぱりそうなったんですが、ここまで毎回誰かが死ぬとは…。
小栗旬くんの義時も完全にダークサイドに堕ちてしまいましたし…。

いよいよですが、この後に控えている中川大志くん演じる畠山重忠親子のイベントは、ちょっとどんな描かれ方をするのか、既にドキドキしております。
いや、マジで、その回は日本中で女性の号泣が発生するものと予想しますし、どういう解釈で描くのか。
全然待ち遠しくはないんですが、避けては通れないので、バッチコーイの気持ちで待ちたいと思います。
ああ、和田義盛さんもか…。
もう、鬱展開でしんどいな…。
この後、いいことが何もないんじゃないか…。

ほぼ「鎌倉殿の13人」の話ばかりになってしまいましたが、つまり、「鎌倉燃ゆ」も「鎌倉殿の13人」も面白くて、「鎌倉燃ゆ」は予習によかった、ということです。

この後の「鎌倉殿13人」の予習にはどうかなぁ、もう、ここまで来ていると、予習になる部分はあまりないんですが、復習ということでどうでしょう。
これまでを思い出しながら読むのもよいと思いますよ。

ということで、いつも以上に愚にもつかないレビューになってしまいましたが、2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿13人」の主人公 北条義時の活躍した時期にフォーカスした、話題の先生方の短編集「鎌倉燃ゆ」是非読んでみてください。
短編になっているので、長編だと読み切れないという方にも読みやすいんじゃないかと思います。
面白いですよー。

あー、鎌倉行きたいなぁー。
「鎌倉殿の13人」が終って、来年、人出が落ち着いたら行こう。
鶴岡八幡宮をお参りしてこよう。

歴史には浪漫がある。

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