織田信長が断行した石山合戦。第一次木津川口海戦までの、村上水軍と能島村上当主の娘の活躍を描いた超エンタメ作品「村上海賊の娘」

和田竜

2014年に発表された第11回本屋大賞で、堂々の一位に輝いた和田竜(わだりょう)さんの作品。

石山合戦とか村上水軍を知らなかったニワカ管理人は、当初「え、海賊の話?それはあんまり魅力を感じないなぁ」と、和田竜作品で一番最後に読んだんですが、ごめんなさい、間違ってました。めちゃくちゃ面白かったです。

時代は、織田信長が天下布武を掲げて日本全土を抑えにかかっている頃。
勢力をつけていた一向一揆衆を抑えるために、その一向一揆衆の本丸である大阪の石山本願寺を信長が落としに行く石山合戦の前半、第一次木津川口の戦いまでが話のベースになってます。

この戦いでは、有名どころの大名だと、織田、毛利等がでてくるんですが、この戦いに村上水軍も参加します。村上水軍の立ち位置はネタバレになるので内緒です。

で、その村上水軍ですが、瀬戸内海で絶対的な強さを誇っていて、日本全土にもその名を轟かせていたくらいの最強水軍だったみたいです。
ところで”水軍”という言い方ですが、パっと見は艦隊っぽいんですが、当時は大砲がまだあんまりないみたいですから、海戦が今のように砲撃戦でなくて、敵艦に接舷して乗り込んで乗っ取るみたいな戦い方なんですね、なので雰囲気”水軍”。
まあ、あれですね、榎本武揚ではなくて、ジャック・スパロウなんですね、海賊。
なので、この作品でも、敵艦に乗り込んで「ヒャッハー!」みたいなノリあります。

村上水軍は、能島村上(のしまむらかみ)、因島村上(いんのしまむらかみ)、来島村上(くるしまむらかみ)の3村上家からなっていて、そのうちの能島村上の当主 村上武吉の娘 景(きょう)がこの作品の主人公です。当主の娘なので、作中では一部の人達には景姫(きょうひめ)と呼ばれます。

んで、この景姫ですが、おてんばどころか、サムライです、いや忍者的でもあるか?いや、違うな、ああ、海賊です。うん、サムライでもなく、忍者でもなく、まさに海賊です。”賊”です。やばい姫です。ピュンマかよってくらい水中戦めちゃくちゃ強いし。ピュンマって誰だよ、調べてください。

このやばい姫が瀬戸内海を舞台に(とはいえ、後半は、まあまあ大阪寄りが舞台になりますが)めちゃくちゃやります。

で、このやばい姫に負けずとも劣らない存在感を放ち続けるのが、もう一人の主人公くらいの勢いの眞鍋七五三兵衛(まなべしめのひょうえ)。”まなべ”が苗字で、”しめのひょうえ”が名前です。読めねぇ…。

真鍋七五三兵衞は、村上水軍とは別の真鍋水軍の親分なんですが、もうとにかくでかくて豪快でガハハと笑うパズーの親方と、キングダムの麃公(ひょうこう)将軍を足して3で割って割り切れなくてどうしよう…って感じの人のイメージなんですが、皆さんはどうですか?

この真鍋七五三兵衛が、いろんな立ち位置で景の前に立ちはだかるというか、真鍋七五三兵衛の立場は変わらないんだけど、景があちこちうろうろするので関係性が変わるというか、もうそのあたりはネタバレになるので書きません。

この他にもめちゃくちゃ多数のキャラクターが入り乱れて、木津砦の戦いに向かっていく情勢あたりから、第一次木津川口の戦いまでが描かれます。(キャラクター出すぎるので、必ず全巻、巻頭に登場人物の紹介が書かれているという親切さ)
木津川というのは大阪の石山本願寺の近くを流れる川で、その河口にですね水軍が集結して歴史に残る大海戦が行なわれるんですが、まあその大海戦がこの作品のクライマックスになります。

ハイライトは、やはり前半クライマックスの木津砦の戦いと、ラストの第一次木津川口の戦いですな。ここは手に汗握る怒涛の展開なので、読むのが遅い管理人ですら一気読みでした。

で、この作品、驚くのが、読んでいるとめちゃくちゃフィクション感あるのに(作り話っぽいということ)、実は発生してるイベントは史実どおりで、登場人物も約1名を除いて実在した人物だということ。すごい!
そして、実在しない約1名というのが、主人公の景だということ(笑)。

実在しないというと語弊があるのでもう少し説明しますが、正確には、村上武吉の子供に娘は存在するらしいです、家系図に書かれているそうです。ただし、その娘の名前はわからないし、家系図上に「女」と書かれているだけでそれ以上の記録はないのだそう。和田竜さんはそこを巧みに利用して、想像を膨らませて主人公 景を作り上げ、この作品に仕上げたらしいです。いやすごいなぁ。

管理人は冒頭でお伝えした通り、この作品を読むまで石山合戦を知りませんでした。
この作品を読んだ後に、いろいろ調べたら史実通りの話であったことにびっくり。
いや、細かい部分や、景のような存在があったとかいう部分は別ですよ。
登場人物や、その登場人物がどの戦いで亡くなっているとか、その関係性とかが史実通りなので、もうほんと、実際、細かいところもこの作品のようだったんではないの?と思えてしまいます。

ということで、良くも悪くも、史実通りなので、史実を知っている方が読んだら先がわかってしまっているので、ここは、史実を知らない方に、史実を知らない状態で読んでいただいて、読んだ後に史実を調べて管理人のように胸を熱くするのがよろしいのではないかと。

あ、そうだ、作品に出てくる「鬼手(きしゅ)」という謎の秘策があります。
これは、作中ちょいちょい名称だけでてきて、どういうものかわらず気になりますが、最後にその全貌が明らかになります。
どのくらいの秘策なのかは、読んで確認してみてください。
「これが鬼手かぁー!」となるか「これが鬼手か?」になるか。
管理人は中間くらいでした(笑)。

それと最後に。
この作品、きっと将来、映画化とかされるんじゃないかなぁ、と思ってます。
で、気になるのは、景を誰がやるかってことなんですよねぇ。
管理人のイメージでは、綾瀬はるかさんなんですが、年齢的なところが合わないかなぁ、と。
かと言って、他に合いそうな方が今のところ思いつかないんですよねぇ。
皆さんはどう思いますか?
まだ未実写化なのでそういうことも考えて読み終えました。

ちょっと全体が長い作品ですが、おススメの一冊であることは間違いないです。

歴史には浪漫がある。

ノンフィクション度
3.5
奇想天外度
2.5
サムライ度
3.5
忍者度
0
エロ度
0.5
管理人満足度
4
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