こんにちは。
いよいよ東京から他県への移動制限が解除になりましたね。
ワクチンができたわけではないのですけど、ある程度、対処のしようができてきてるってことなんでしょうかね?
防衛の手段については有効な策が見えてきたようには思いますが、感染してしまった時のことを考えると、まだまだ全然外出する気にはならない管理人です。
志村けんさん、岡江ママさんが亡くなってしまうくらいヤバいものだということを忘れないようにしないと。
さて、そんな中、早くも一作品読了しました。
今回は、Twitterでつぶやいた通り、管理人初の著者で池波正太郎さんの作品「堀部安兵衛」です。
なんというか、ともするとエンタメ的な匂いの濃厚な忠臣蔵の主役級だったりするので、また随分とアイドル的な人物をターゲットにした作品を持って来たなぁという感じがするかもしれませんが、その理由は後述するとして、正直、池波正太郎さんはエンタメチャンバラ色が強い印象(≒フィクション要素強め)があり、これまでちょっと敬遠していたので、実はあまり期待せずに読み始めたのですが、それはすぐに間違いだったっぽい(少なくとも本作に関しては)ことがわかり、池波正太郎先生と、全池波正太郎ファンの方にごめんなさいしたくなりました。ごめなさい。超絶に面白かったです。
上下巻合わせて1000ページくらいの作品なんですが、読むのが遅い管理人がこれを8日という短さで読了したくらいですから、その面白さたるやもう…。そういうことです。
ということで、早速(でもないですが)本作のレビューです。
まず、本作はタイトルの通り、忠臣蔵で有名な堀部安兵衛が主人公の作品で、基本的には最初から最後まで堀部安兵衛のことが描かれるので、途中、長いページをかけて、他の人のことを描くみたいな部分はありません。
だからなのか、途中で、キリのいいところ、みたいなものがなく、安兵衛の壮絶すぎるその人生の波乱万丈ぶりも相まって、読み進める手を止めづらいくらい。実際、管理人、そのせいで、連日夜更かししてしまいました。それくらい面白い。
安兵衛は忠臣蔵で有名だと思うんですが、本作では、忠臣蔵部分については、全体の1/5くらいしか割かれていません。
というか、本作を読んでわかったんですが、「堀部」の姓を名乗るのはその忠臣蔵(というのは後世になって上演された人形浄瑠璃や歌舞伎の演目名であって、本作を読んだ後となっては、一般的な「赤穂(あこう)事件」と呼びたい気持ちなので、以降は「赤穂事件」と呼ぶことにします)に至るほんの数年前から、安兵衛の人生においても後期のほうで、それまでは「中山安兵衛」なんですね。で、本作ではその「中山」姓の頃のことが大半を占めます。なので、本作は忠臣蔵の本ではなくて、ホント、中山(堀部)安兵衛の伝記本です。
読了後に調べてわかったんですが、安兵衛は赤穂事件後、切腹を命じられるまでの二か月くらいの間に、日記として自分のことについての記録を残し、それを、本作でも重要人物として登場する細井光沢(ほそいこうたく)に託したそうで、だからなのでしょう、安兵衛や赤穂事件についての顛末は、忠臣蔵になったり、こうして後世に語られるわけですが、だとすると、本作で描かれていることも、事実である部分が相当あるんじゃないかなって思えます。
池波正太郎先生のことなので、きっとかなりの調査の上で本作を書いているはず。いや、そうに違いない。と思おう。
そう思って読んだとしても、実際に読み始めると「これマジ!?ほんとにこんなことあったの!?」って事件が冒頭からたちまち発生するんですけど、これ、本当だったらしく、その後に発生する事件もとんでもないことばかりなのに事実らしいので、安兵衛の人生って、本当に信じられないくらい滅茶苦茶で、それでいて、最終的にあんな好漢になるって、どんだけ出来た人物なんだろうと思うのと、赤穂事件の吉良邸討ち入りからの、終わりに向かっていく破滅感というか、悲壮感というかを思うと、思い出しただけで目頭が熱くなります。
そう、本作、最後は泣けます。泣きます。号泣です。
こんなに優秀な人物がたった34年で、言えば自らの手で生涯を終わらせるって、どんだけ惜しいことをしたか。ただ、それだけ優秀な人物であったからこそ、自分の命を賭してでも、親同然と慕った人物に対しての仇討ちをせずにはいられないという想いに至ったんでしょうねぇ。
しかし、それを見届けた家族・友人のことを思うと、もう切なくて切なくて、吐きそう…。
安兵衛は、吉良邸に討ち入った赤穂浪士達の中でもトップの剣客で、その腕前に至るまでの顛末も、もちろん本作で描かれるのですが、そこまでにはいくつもの切り合いを経験してまして、そのあたりは、さすが池波正太郎先生の本領発揮というか、いわゆるチャンバラ場面の描写はめっちゃかっこいい。
管理人が過去読んできた作品群の中では、一番、読みごたえがある表現をされているような気がして、なんていうんですかね、剣戟(けんげき)の一瞬や、勝負を決めるその刹那の瞬間、というのが非常にリアルに感じられてよいです。
本作中の数あるチャンバラシーン(チャンバラ以外でもだなぁ)の中で、一番の激アツは高田の馬場でしょう。吉良邸討ち入りではありません。高田の馬場です。(大事なことなので二回言います)
「高田の馬場」が何かは読んで確認していただきたいですが、あそこは、安兵衛の人生に於いては、吉良邸討ち入りと同等か、ともするとそれ以上のハイライトなんじゃないですかね。
「高田の馬場」は、もういろんな意味で激アツ展開で、もし寝ぼけまなこで読んでいたとしても、一気に目が覚めます。間違いない。
この数行ではとても語れない強烈な場面なので、これから読む方は相当期待して読んでいいと思います。手に汗握りすぎて、読み終えた後、疲れるんレベル。そのくらい凄かった。
安兵衛好きな方、どうでしょう?そうですよね?
一方、涙無くして見れないのは、やはり最後の章ですかね。
ここはもう、なんというか、共に戦い散ることを選んだ仲間たちと交わす最後の言葉や、それまでの安兵衛の人生、家族・友人の想いなんかが、怒涛のように押し寄せてくる、本作のクライマックス、つまり安兵衛の人生にとってもクライマックスで、ちょっと言葉には言い表せない感じです。
果たして安兵衛はどういう心情でそれに挑んだのか。考えると茫然としてしまいます。
管理人、ちょっとお腹と首をぞわぞわさせつつ、泣きながら読みました。
本作は基本的にある程度事実に基づいて書かれていると思っているんですが、フィクションかノンフィクションかの区別がつかなったのが、お秀(ひで)と鳥羽又十郎の存在。
あの二人って本当にいたんでしょうか?
読んでいる限りでは、ちょっと判断がつけづらく、本当っぽくあるのだけど、だとしたら、あの二人もまた、とんでもなくハチャメチャな人生歩んでいるのと、どんだけ安兵衛との縁があんの!?ってくらいあり過ぎ。真偽のわかる方、教えてください。
実は、途中まで中津川祐見(なかつがわゆうけん)も、フィクションかノンフィクションかの判断がつけづらかったんですが、途中で「これ、祐見は実在したんだ」と思ったのと、読了後に調べて確証を得たわけですが、しかし、祐見と安兵衛の話もあれ全部本当なのですかね?
本当だとしたら、これも凄くて、もう、ホント、安兵衛の人生、ちょっとドラマチック過ぎて、そりゃ、主人公にして作品を作るには十分すぎると思えます。「こんなことある!?嘘でしょう?」ってことばっかりです。
さて、そんな安兵衛の話の本作なんですが、実はこれまで管理人が選んできた作品群(山田風太郎作品は除く)の登場人物とはちょっと違っていることがあって、それは、日本史的に何か大きな出来事に関わったり、影響を及ぼした人とは、ちょっと一線を画す、ということ。
「赤穂事件」そのものは、確かに事件は事件だし、これによって徳川5代将軍綱吉(生類憐みの令を行った方。管理人が過去にレビューしている「天地明察」でも登場。)が、赤穂事件の発端となった松乃大廊下の刃傷(にんじょう)事件でおこなったミス裁定を正せたということで意味はあるのだと思うけど、日本全体に対しての影響の度合いという意味でいくと、きっと大きくはないと思うんです。そう、例えば、エゥーゴがティターンズと戦ったあのグリプス戦役が実は初代ガンダムの1年戦争に比べると全然小さい規模の事件だったように(いきなりのZガンダムネタ。グリプス戦役のほうはもっと規模がでかいけど。)。
話を元に戻します。
しかも、忠臣蔵というのは、仇討ちの美談という感じのものなので、ドラマ性が強いというか、歴史の勉強になるというよりも時代劇的要素が強い気がするので、本来ならば、あんまり管理人が選ばない類のもの(山田風太郎は除く)で、その主役の一人という感じの堀部安兵衛を追うというのは、本来だとあまりない選択なんですが、ではなぜ今回は手を伸ばしたのか。
冒頭に「後述する」と言っていた本作を選んだ理由なんですが、実は、安兵衛の二番目の姉(とはいえ、一番目の姉は早くに亡くしているので実質は一番上の姉)である「きん」さんが嫁いだ先で、本作でも度々登場する長井彌五左衛門(やござえもん)さん宅の越後国蒲原郡牛崎村というのが、管理人の出身地にめちゃくちゃ近く、というか、もはや近所でして、そこで安兵衛が数年間過ごしたのだ、という話をこの数年内に聞き(それまで、知らなかった…)、「堀部安兵衛を追うしかねぇ」ということになり、その手始めということで本作を購入した次第。
越後国蒲原郡牛崎村というのは、今の新潟県新潟市南区牛崎でして、管理人の出身地がここに極めて近く、あの地であの堀部安兵衛が数年を過ごし、その後も何度か訪れたみたいな話を聞いた日には、もう管理人、激胸熱状態。
以前、実家に帰った際に、その地域の有志で作ったという手作りの資料(それもかなり前に作られたもので、確か南区が白根市時代だった頃のものじゃないかと)を見つけまして、そこに、安兵衛から長井彌五左衛門さんに宛てた手紙の内容が書かれていたりして「ああ、本当に安兵衛ここにいたんだぁ」と実感。
本作でも、その長井家に向かう場面等で、信濃川の対岸を歩くシーンがあったりして、管理人がその情景を想像するには難くなく「安兵衛も、護摩堂山とか、遠くに見える弥彦山とか見てくれたのだろうなぁ」と思うと、感慨もひとしおでした。
ということで手にした本作だったんですが、結果、そのこと以上に、中山(堀部)安兵衛という凄い人物の生き様に関して知見を得ることができた上に、えも言われぬ興奮と感動を存分に与えてくれた本作は、読んで大正解、読まなかったら損してた一冊だったなぁと思います。
忠臣蔵ではなくて、安兵衛を主人公にした映画とかあるのかなぁ?
あー、最近だと、2007年に小澤征悦さん主演で2時間ドラマがあるんだなぁ。
「2時間ドラマの割にはエピソードと登場人物が多く、そのためやや駆け足な展開になってしまっている。」って書かれてる。
うん、そうね、安兵衛の話を2時間でやるには、全然時間が足りないと思う。
本作を読んだら、きっと、誰もがそう思うんじゃないかなぁ。
さて、今回もダラダラと愚にもつかないレビューとなりましたが、まあ、毎回のことなので、そろそろ慣れていただくとして、忠臣蔵の堀部安兵衛という単純なくくりでなく、信ある人の死を正義に変えるため自らの命をかけ、34年という短い生涯を、激烈な志と共に駆け抜けた英雄(ヒーロー)中山安兵衛の生き様を描いた本作、是非読んでみてください。
めちゃくちゃ、面白いです。
歴史には浪漫がある。
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