大藩として維新に尽力したにも関わらず新政府設立時に冷遇された加賀藩の藩士 千田文次郎と島田一郎の人生を決定づけたのはこれだった「西郷の首」

伊東潤

こんにちは。
またまた、久しぶりの投稿になりました。

本業のほうが忙しくてどうにもなりません。
仕事を分散するべく採用をおこなっておりますが、採用してもすぐにあれこれ任せられるわけではないので、まだしばらくはこの状態が続くと思います。
ここで愚痴っても仕方がないので頑張ります。

さて、世の中ですが、終息方向に向かったと思ったコロナが、新たにオミクロン株などという変異種の猛威により、再びまん防に突入しておりまして、管理人の周囲でも感染者が続出しております。
幸い管理人は未だ罹患せずにおりますが、もうこうなってくると運ゲーではなかろうかと思わなくもなく…。
ただ、せっかくここまで罹患せずに頑張ってきたわけですからねぇ…。
なんとか、注意して、感染防止をしていきたいと思います。

そしてこの期間中、冬季オリンピック(北京)が開催されまして、そしてあっという間に終わりました。
連日、競技の模様がテレビで放送されまして、管理人は五輪も大好きなので、二週間楽しませてもらいました。
スノーボードハーフパイプで、同郷の平野歩夢くん(新潟県村上市出身)が金メダルをとった時は泣きました。
ロコ・ソラーレのおかげで、カーリングのルールも戦術・戦略もだいぶ理解できたと思います。
名前を挙げたらキリがないのですが、とにかく日本の選手団がよく頑張ってくれて、また、外国の選手たちとの称え合う姿にもホロリとしたり。
いやぁ、なんだかんだでオリンピックは楽しいです。
今回、いろいろと問題もありましたが、次回までにはそういったこともクリアにしてもらって、また、4年後を楽しみに待ちたいと思います。

そんな中読み終えたのが、またまた伊東潤先生の作品で、いい加減に北条は離れようってことで、今度は幕末の「西郷の首」です。
まあ、間違いないですね、面白かったです。

ちょっと連続で伊東潤先生の作品を読みすぎて「忖度してんじゃね?」と思われそうですが、誰もそんなことを気にしてこのブログを読んでないはずなので、どう考えても杞憂でしかないうえに、管理人、気に入った作家さんの作品をまとめて買って読んでしまう癖があるという、ただそれだけの理由でして、他にももう一冊買ってあるんですけど、次はさすがに違う作家さんの作品を読もうかなと思ってますが、それはどうでもよいですね。

本作は、昨年の年末から読み始めたのですが、ちょうどNHK大河ドラマ「青天を衝け」が終わった頃で、その余韻がある中で「青天を衝け」で味わった「いつもと違う幕末」のテイストがあって、個人的には非常にドンピシャでした。
そういうのを意図して手にとったわけではなくて、たまたまだったんですが(本の購入自体は結構前にしていて、たまたまこのタイミングで手に取っただけ)、無心ながら毎回そのあたりのセレクトはよくて、我ながら感心します。

というわけで本作ですが、タイトルにも書いたとおり、幕末に新政府軍の先鋒を務めて維新に尽力したにもかかわらず、維新後の新政府メンバーに一人も登用されなかった不遇の藩、加賀藩の足軽の家の息子で幼なじみの千田文次郎(せんだぶんじろう)と島田一郎の二人を主人公にした作品です。

どちらも実在の人物で、千田文次郎については、千田登文(せんだのりふみ)という名前もあるようです。
本作では文次郎と呼ばれます。
実は管理人、本作を読むまで、この二人のことを一切知りませんでした。
さすがニワカです。

読み始めた頃は「この二人は実在したのかな?」「これ史実なのかな?」と思っていたんですが、読み進めるうちに「実在したんじゃないか?」と思えてきまして、最後には「これ、ガチなやつなんか…」となりました。
真実は小説よりも奇なり、というか、うーむ、当時の日本には、こういう人達がたくさんいたのかなぁ。
西郷さんと大久保さん然り、歴史に名をなすという意味では、渋沢栄一と喜作とかも。
幼い頃によく一緒に遊んだあの子も自分も、ひとかどの人物になる、なんてなかなか起きそうもないのだけれど、類は友を呼ぶものなんだろうか。

あ、本作をこれから読もうと思っていて、二人をご存知ない方は、ググって調べたりせず、知らないまま読んだほうがよいですよ。
クライマックスまでの先の読めなさがたまらないので。

前半は、この足軽の家の少年二人が青年になるまでが描かれます。
文次郎は武のほうに秀で、一郎のほうは文のほうに秀でているんですが、時代が時代なもので、攘夷だなんだという世間の波に二人とものまれていきます。

武に秀でた文次郎が、わりと穏やかというか身分をわきまえる方向に思考するのに対して、文に秀でる一郎が血気盛んな思考にいくのが、最初のうちは読んでて混乱しました。
逆じゃね?みたいな。
偏見なんですけどね。

前半の山場は、その二人が慕うある方の最期。

「生胴(いきどう)」って知ってます?
ご存知ない方、ググって調べちゃだめです。
これもググらないで、本作を読んでご理解いただくとよろしいかと。
またこの場面、伊藤潤先生が、衝撃的な描写をしてくれてまして、息をのむのはもちろん、そこを読んだ後はしばらく放心状態になるレベル。
とにかく、描写が凄くて、エグくて、本作の前半の山場じゃないかと思います。
気合を入れて読み進めてみてください。
「生胴」の描写自体も辛いですが、それに抗うことのできない当時の世の中の不条理さみたいなものにも泣けます。

その後、例の西軍(新政府)と東軍(幕軍)とに分かれた幕末の内戦が勃発するわけですが、二人の属する加賀藩が様子見を決め込むあたりから、加賀藩の日和見感がでてくるんですが、まあ、この時代、難しいよなぁとも思います。
判断を誤ってしまうと、下手すると、家が無くなってしまいますからね。

このあたりから、いつもの幕末作品に登場してくるキャラクターが続々と登場し始めまして、「渋沢栄一」の名前もチラっと出てきたりします。

ややネタバレになりますが、最終的に加賀藩は西軍(新政府)に就くので、越後長岡藩との戦いになった「北越戦争」では、「」や「龍が哭く」の主人公 河井継之助とは敵として対峙することになりまして、「」や「龍が哭く」を読んでいた管理人としては、長岡藩に対して反対側からの「北越戦争」が見れてその部分でも楽しめました。
読んでて辛かったですけども。

しかし、加賀藩、残念。
加賀百万石はこうして終焉を迎えたか、というのを本作で知りました。
新潟県出身の管理人としては、同じ北陸という形でくくられる石川県、富山県は親近感があり、幼少の頃には実際に兼六園などにも行ったことがあるので、わりと思い入れのある藩なのですよねぇ。
その加賀藩が、北越戦争などで人員を大動員し、先鋒まで務めたのにアレの処遇では、藩士達が憤る気持ちもわかります。
うーん、残念。
北陸新幹線も開通しているし、石川県、行こう。

結果、史実が示す通り、幕末の内戦は西軍(新政府)の勝利となり、維新はなされるわけですが、これ以降で、主人公の文次郎と一郎の進む方向に乖離が生まれ始めるのかなぁ。
それは、まさに、西郷隆盛と大久保利通のような…。

ということで、この先の顛末は本作を読んで確認していただきたいんですが、なんというか、ラストは、清々しさも汲み取り方によってはあるものの、基本的には切なくて、読み終えた後はグッとこみ上げるものがありました。

激動の幕末の中で、この二人のとった行動は、いずれもその後の日本に大きく関わりのあったもので、それがこの二人によって成されたという真実を本作で知り、非常に驚いたと同時に、新たな知見が得られてよかったなと思います。

なんだろうなぁ、幕末の作品を読むと、毎回、いかんともしがたい感情で終わるのですよねぇ。
「この内戦、やる必要あったのか…」的な…。
当時はそうせざるを得なかったのかもしれないけれども、日本のことをこれだけ考えてくれる人達が、その人達同士で殺し合いするって、それによってたくさんの人の命が奪われるというのはなんとも…。
他にやりようはなかったのか…と思わずにはいられません。

先にチラっと書きましたが、本作では、竹馬の友でありながら最後に袂を分かってしまう西郷隆盛と大久保利通の関係性と、文次郎と一郎の関係性を、意図して並べているのだと思います。多分。

2018年のNHK大河ドラマ「西郷どん」で、瑛太(現:永山瑛太)さん扮する大久保利通が、西南戦争勃発の前に、新政府軍と対峙しそうになっている西郷隆盛に対して「吉之助さぁ、起つなよ…、起つんじゃないぞ…」とつぶやく場面があるんですが、本作の後半はまさにその心境でして…。

変わっていく日本に対して上手く折り合いをつけていこうとする文次郎と、武士としての矜持を持った行動にこだわり続けたい一郎の生き方を、それぞれがまたそれをわかっていながらにして生まれる悲劇、というかなんというか…。
ラストは、そんなことを想いながら「あぁぁぁ…」と一挙に読むことになりました。

「プロローグ」と「エピローグ」は同じ人物ですね。
「エピローグ」を読み始めた途端に、「あ、プロローグあったな、そうか彼だったか」と思いました。
ラストで血液が沸騰してるところでの「エピローグ」は、心を落ち着かせるのにちょうどよかった。
それくらい、ラストは胸熱で、泣きながら読むレベルでした。

さて、また、今回もダラダラと愚にもつかないレビューをしてきましたが、冒頭にお話しした通り、管理人としては、「いつもと違う幕末」で、幕末の加賀藩の情勢と加賀藩から見た幕末が見れたということで知見を得るという点でよかったのと、西郷隆盛の最期、大久保利通の最期に大きく関わった千田文次郎さんと島田一郎さんという実在の人物のことを知り、且つ、彼らの人生に対して大きく想像を掻き立てることができた本作はとても面白かったです。
胸が熱くもなり、悲しくもなり、神妙にもなり…という感じでした。

これのドラマ化はあると思うけどなぁ。
こんなにドラマに適した二人、なかなかいなくないか?
映像化するのに問題がある場面は多々あるけれども、そこはそれなりに上手く表現して。
是非とも映像化してもらいたいなと思います。

というわけで、管理人みたいに、昨年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」で描かれた「違う角度からの幕末」路線を気に入った方、新政府設立時に冷遇された加賀藩から見た幕末と、その加賀藩から出て日本の転換にあたる事実に大きく寄与した二人の青年の激胸熱ドラマの本作、是非読んでみてください。
めちゃくちゃ面白いですよー。

歴史には浪漫がある。

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