こんにちは。
前回の投稿から少し時間が開いてしまいました。
この一か月は、本職のほうが特に忙しく、コロナで緊張した状態にある中でも出張等があって、なかなか読書時間が確保できませんでした。
ゴールデンウィークも、ほぼいつも通り仕事をし続けた状態でして、未だ、本職の忙しさは解消していないんですが、さすがに、気晴らしのために多少の読書時間をとれたことで、一作品読了できたといった感じです。
4月26日から三度目の緊急事態宣言が出まして、今年も緊急事態宣言の中、ゴールデンウィークが過ぎていったわけですが、5月11日までと言っていたものが、また、5月31日まで延長ということで、飲食店の方など影響の大きな方の心中はいかなるものかと察するところですが、一方で、感染者数が全然減らないという状況にいかんともしがたいというところではあります。
実家の両親は、5月か6月にワクチンが打てるらしく、それについての通知が来たそうです。
それはよかった。
我々は果たしていつになるのか、しかも、変異種に対してはワクチンの効果はいかほどか。
いつまでこの状態を続けることになるのか、未だわからない感じではありますが、各々ができる限りのことをしていくしかないのかなと思う次第。
とりあえず、恐らくコロナの影響を受けにくい業種の一つであろうIT系の仕事に就いていて、テレワークでの仕事が可能な管理人は、可能な限り、外出の自粛やテイクアウトによる外食産業への協力など、やれることをやっていこうかなと思います。
お酒が大好きな管理人ですので、早く以前のように飲み屋さんでガハハハッと笑ってお酒が飲めるようになって欲しいなと思います。
さて、そんな中、管理人が読了した作品は、山田風太郎作品好きの管理人にとっては満を持しての登場となりまして、過去に何度も映像化され、今だに舞台で上演され続け、「甲賀忍法帖」と並んで山田風太郎先生の代表作の一つであろう、山田風太郎先生自身が「忍法帖シリーズの最高傑作」と言っていたという超有名作品「魔界転生」です。
「魔界転生」と書いて「まかいてんしょう」と読みます。
「まかいてんせい」ではありません。
いやぁ、やっと、この作品を読むに至りました。
書籍自体はかなり前に購入してありまして、ストックはしてあったんですが、ややトラウマがありまして、なかなか手をつけなかったですが、今回、ようやく手をつけました。
トラウマというのは、このサイトで過去にレビューしている同じ転生モノ(転生のさせ方が全然違いますが)の「武蔵野水滸伝」です。
同じ転生モノなんですが、これがトンデモナイにもほどがある作品でして、このサイトのレビューで未だ破られることのない管理人満足度ワースト記録 1.5 を叩き出すほどに内容がイケてなく「あれみたいな感じだったら嫌だなぁ」という感覚があったものですから、なかなか手を出せずにおりました。
まあ、トンデモナイ要因である転生の仕方が、本作「魔界転生」では、まだ耐えられそうな予感はあったので、そこまで危惧してはいませんでしたが、なんとなく敬遠していたところはあります。
ということで、本作「魔界転生」ですが、久しぶりの山田風太郎ワールドを堪能できたこともあって、面白かったです。
もう過去にいくつも映像化されていて、未だに舞台でも上演されている(これらについては後述します)ので、かなり有名な作品なんだと思いますが、それらの内容は、結構、原作と違っているようですね。
この度、やっと原作を読み終えたので、それら映像作品も追ってみてみたいと思います。
さて、本作の内容についてです。
時代は、本作で主要な人物として登場する徳川家康の10男にあたる徳川頼宜(とくがわよりのぶ)が全盛の頃でして、作品冒頭に「寛永15年3月1日の夜である」とありますので、西暦 1638年からのスタートになります。
前年の1637年に、長崎県の島原で発生した徳川幕府とキリスト教徒との内戦で有名な「島原の乱」がありまして、その際に、キリスト教徒側を主導した天草四郎(あまくさしろう)や、その臣下である森宗意軒(もりそういけん)が、本作でもメインキャストとして登場してきます。
島原の乱で幕府軍に屈してしまったキリシタン教徒軍ですが、これによって、主導者である天草四郎は亡くなります。(実際は享年が不明であるとのこと。つまり、この際に亡くなっているかも定かでないらしい。このあたりの史実で不明な部分をつかって忍法帖に盛り込んでくるあたりが山田風太郎先生らしい。)
しかし、ここで生き残った臣下の森宗意軒が、その後、西洋の魔術的な何かと組み合わせて(キリスト教徒なので)完成させる忍法が、人間を生まれ変わらせる(転生させる)というイカれた(褒めてます)忍法「魔界転生」です。
うーん、いいねぇ、この山田風太郎感。しびれます。
ちなみに、この森宗意軒、長崎の島原にいたのは、その前の大阪の陣で真田幸村(源二郎信繁)に与して戦い、敗れた末に行き着いた先が島原だったらしいということで、わりとひとかどの人物のようです。
ですが、この森宗意軒が悪い人で、その後、軍学者の由比正雪(ゆいしょうせつ)と、先に紹介した徳川家康の10男で紀伊和歌山藩主の徳川頼宜と組み、忍法「魔界転生」を使って、当時の将軍 徳川家第三代将軍徳川家光を転覆させようとする、というのが本作の大枠です。
ぶっちゃけ、本作を読むにあたっては、ここまで理解しなくていい気もしますが、まあ、わかっていたほうが没入感があるかもしれないので、前知識として入れておかれるとよろしいかと思います。
そして、その忍法「魔界転生」を会得した森宗意軒は、かつての主君であった天草四郎を転生させ、その後、宮本武蔵を筆頭に名だたる剣豪たちを次々と転生させていきます。(彼らは「転生衆」と呼ばれます)
ただ、この忍法「魔界転生」、転生させる媒体としてその森宗意軒の手の指が必要で、つまり、最大でも10人(両手の指分)しか転生されられないのと、転生させるにしても、剣の道を極めた等の凄い人でないとダメであったりとか、いろいろ条件があって、最終的には全部で7人に留まります。
その7人のうち管理人が知っていたのは天草四郎と宮本武蔵だけだったんですけども、他の5名も実在した人物らしく、それを知っている方にとっては、きっと「東映まんが祭り」ばりのオールスターなんじゃないでしょうか。
また、主人公である柳生十兵衛にゆかりのある人物が7人の中に含まれるというのも、本作を面白くしている要素の一つかと思います。
そして、その悪だくみを阻止すべく立ち上がるのが、実は、森宗意軒が「転生さたいけどできなかった」残りの三人のうちの一人で、森宗意軒が「宮本武蔵と並んで是非とも転生させたかった」らしい忍法帖シリーズが生み出した不世出のヒーロー柳生十兵衛なわけです。
いやぁー、我ながらこの煽りかっこいい。
柳生十兵衛かっこいいぜ。
この柳生十兵衛、本作「魔界転生」の前に、本サイトでもレビューしている「柳生忍法帖」での登場が忍法帖シリーズでの初登場となってまして、どうもこの二作品は、当時、連続して書かれた作品のようです。
山田風太郎先生も、かなりこの柳生十兵衛を気に入っていたらしく、当初、もう一つを含めた三部作にしたかったらしいですが、結局、三部目になる作品「柳生十兵衛死す」は、本作「魔界転生」の発表から20年以上も後に出されたとのこと。
まだ、管理人は読んでいないのですが、こうなったら読むしかありません。
念のためお伝えしておくと、本作「魔界転生」と「柳生忍法帖」とは話の繋がりはなさそうです。
但し、柳生十兵衛のキャラクターは「柳生忍法帖」のそれと同じ感じで、剣の腕はめっぽう凄いけど、俗世間とは距離を置いて暮らしていきたい、でも、実はいいやつ、というニヒルなヒーローにありがちな、そういうかっこいいキャラを踏襲しています。
そんな柳生十兵衛と彼を慕う柳生衆、そして、血縁者を転生衆に殺された女性三人+小僧一人 vs 転生衆7人+根来衆とのバトルロイヤルを描くのが本作「魔界転生」というわけです。
さて、ここまで読んでお気づきの方いるでしょうか。
柳生十兵衛も転生衆7人も、剣の腕はめっぽう立つ人ですけども「忍者」ではありません。
ここが、管理人的に「おっと」という部分になるんですが、本作は、なんと、忍法はほとんど出てきません。
管理人の記憶が正しければ、森宗意軒が使う本作のタイトル忍法「魔界転生」と、天草四郎が使う忍法「髪切丸(かみきりまる)」の二つだけです。
だって、皆、剣の腕がすごい人達であって、忍者ではないですから。
山田風太郎作品といったら定番の忍法僧も出てこないので、忍法ないんです。
なので、本作で「甲賀忍法帖」や他の忍法帖シリーズのようなイカれた(褒めてます)忍法オンパレードの戦いを期待すると肩透かしを食います。
また、剣豪同士の戦いになるので、戦いのシーンは短いです。
基本的に一撃必殺で、よくも悪くも一回の交錯で戦いは決します。
もちろん、その一撃に至るまでのヒリつく描写は存分にありますので、戦いのシーンも十分に楽しめるんですが、山田風太郎作品に、若干、そのイカれた(褒めてます)忍法のアイディアを期待するところもある管理人としては、ここは、少し物足りないかなぁと思えなくもないです。
きっと、映画や舞台では、このあたりは原作と違って派手な殺陣が見られるのではないですかね。
勝手な想像ですが。
ということで、内容的にはネタバレしてはいけないのでこのくらにするとして、既にお伝えしている通り、本作はこれまでに何度か映画化されてまして、また、この投稿を書いている今現在でも、名だたる人の出演でお芝居が演じられているくらいで、どうもエンタメ性が高いという評価のようです。
まあ、キテレツな忍法がない(忍法「魔界転生」がキテレツですが、転生のさせ方は原作を踏襲せずに、違う表現にもさせやすそう)のと、転生させるので時代を問わずに(とはいえ転生のさせ方的にあまりかけ離れた時代にすることもできないはずですが)歴史上の有名人を登場させやすいこと、あとは、山田風太郎作品にしては珍しくエロが少ない、というあたりで、一般の人たちにも受け入れやすいのかもしれません。
しかし、しかしです。
どうやら、映画も舞台も原作のそれとはそこそこ乖離していて、だいぶオリジナリティがあるらしいとのこと。
今現在やっている、柳生十兵衛を上川隆也さんが演じる舞台「魔界転生」も、パッとキャストを見ると、根津甚八(真田幸村の家臣。真田十勇士の一人)とか淀殿(豊臣秀吉の側室)とか、原作にはないキャラがいるではありませんか。
また、どうやら、敵の首謀者は天草四郎になっているらしく、確かに見栄えはいいかもしれないですが、原作ではそうじゃないので、そのあたりどうなの…というのは、原作を読んでる身からすると思わなくもないですねぇ。
まあ、原作に忠実にすると、もしかしたらやや地味になるかもしれない、というのは否めないですが。
しかし、しかしだなぁ。うむぅ…。
この傾向は映像作品にもみられるようで、1981年に公開された主人公柳生十兵衛を千葉真一さんが演じた映画「魔界転生」でも、敵のラスボスは沢田研二さん演じる天草四郎であったり、2003年に公開された映画「魔界転生」では、もはや主人公は佐藤浩市さん演じる柳生十兵衛でなく、窪塚洋介さん演じる天草四郎がそれっぽい気配があり、もうなにがなんだか…。
ということで、これらの作品は、この後、観ていこうと思うんですが、そういう意味で、若干、不安だったりしております。
観たら、この投稿を更新して追記していきますかね。
そうそう、更に気になることとしては、今やっている舞台「魔界転生」についての、藤原紀香さんの記事で「原作にはないお品という役」という発言が「原作にはお品という人物は登場しない」という意味なのか、「原作に登場したお品とは違うお品に仕上がっている」という意味なのかが気になって仕方がないので、そこは確かめてみたいなぁと思ってますが、前者だとしたら「原作読んで舞台やってくれよぉ」と思わずにはいられない残念な気持ちになるので、それは勘弁してと思っております。
っていうか、管理人が読んだのは原作と違うんですかね?
「クララお品」ってめっちゃ大事な人物で登場してるんですけども…。
藤原紀香にインタビュー! 出演舞台『魔界転生』にかける思いとは?
https://spice.eplus.jp/articles/281002
ということで、最後は、映像作品、舞台作品についての不安の吐露になってしまいましたが、原作は山田風太郎先生曰く「忍法帖シリーズ一番の出来」というくらいなので、間違いなく忍法帖シリーズ屈指の作品に仕上がっていて楽しめますので、忍法帖シリーズが好きな方も、そうでない方も、ぜひ、読んでみてください。
あ、「柳生十兵衛死す」を読まなきゃ。
歴史には浪漫がある。
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