仕事はできるけど扱いが面倒な部下だったんだろうなぁと思う「天下無双の傾奇者 前田慶次郎」

近衛龍春

う~ん、同じ近衛龍春(このえたつはる)作品の「直江兼続と妻お船」がよかっただけに、この作品はちょっと残念。

有名な原哲夫さんの漫画「花の慶次」の主人公にもなった戦国時代の傾奇者(かぶきもの) 前田慶次郎利太(まえだけいじろうとします)の50歳から、最後に米沢(山形県)で直江兼続に仕官する69歳頃までを描いた作品。

読み始めた時点で、50歳と聞かされるので「ずいぶん晩年のほうからスタートするんだなぁ」と思いながら読み進めましたが、まあ、あれなんですかね、晩年のほうが物語にしやすいとかあったんですかね?尺(ページ)の問題もあるのかなぁ、わからないですが。それでも内容はなかなか盛りだくさんですが。

管理人は過去に、漫画「花の慶次」を読んでいたので(内容はあんまり覚えていませんでしたが)、外見のイメージはそれだったんですが、この本の表紙もまさにそれっぽいので、完全にそのイメージで読みました。が、作中の年齢を鑑みるとこんなシュッとはしてないはず。
さらに、慶次郎って「花の慶次」でも本作でも大男ということになってんですが、実際に米沢に残されているという慶次郎が使った甲冑のサイズというのは、普通の人のそれと変わらないらしく「大男だった」というのは違うんじゃないか説が有力っぽいので、そのあたりでも、う~んって感じが否めないんですよねぇ。
近衛龍春さん「花の慶次」の影響を受けちゃったのかなぁ、そんなわけないか。

と、いきなりイマイチ評価してしまったんですが、残念ながらこの作品、ハイライトが思いつかないんですよねぇ…。本人も作中で愚痴るんですが、肝心の大戦(おおいくさ)に出れなかったり、出ても地味な位置に陣取らされたり。

他の近衛龍春作品同様、史実に基づいた良質な伝記モノ感はあるんですが、いかんせん見どころ、というか読みどころ、がいまいちない。手に汗握って一気読みするようなところがあんまりないのですよねぇ。

慶次郎というのは、とにかく戦はめっぽう強い。まさに一騎当千という言葉が当てはまる武将なんですが、いかんせん、そこはかとなく漂う人を馬鹿にする感がどうにもよい感じがしない。それがまあ慶次郎の特徴である「傾く(かぶく)」なんでしょうけど、なんか管理人にはあんまりよい印象じゃないんですよね。

だからなのか、慶次郎はまあまあ不遇の時を過ごしますね。不遇とは言っても、仕官しないかって誘いはたくさんあったようで、ただ本人が好き嫌いが激しくて、やってないだけみたいなんですが…。

前田利家とは仲が悪いからいつも避けられるし(本人も避けるけど)、前田利家の元を離れ、直江兼続に仕えるまで、京でまあまあボーっとしてる。まあ本人は、歌を書いたりして、文化人的な生活をしてたようなので、そこそこ楽しんではいたようですが。

最後に直江兼続に仕えることができたので、なんとか救われたかなぁと思いますが、果たして慶次郎自身も、周りも幸せだったのかどうか。奥さん子供もアレですし…。そんな悲哀を感じさせてくれます。

 というわけで、あんまりいいこと書かなかったんですが、近衛龍春作品らしく、史実に沿ってきちんと書かれてるので、前田慶次郎や前田慶次郎が生きた時代を知るにはよい作品なんじゃないかなと思います。

もっと早く直江兼続に出会ってバンバン活躍して欲しかったなぁ…。

歴史には浪漫がある。

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