暗然たる都を見限り東国に活路を拓く、後北条の始祖で歴史に名を成す風雲児の代名詞 北条早雲が大志を抱き「黎明に起つ」

伊東潤
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こんにちは。

いよいよ非常事態宣言が解除になりまして、まんえん防止法も発令されない状態になりました。
時間制限はあるものの、飲食店でのお酒の提供も行われるようになったようでよかった。
とはいえ、まだまだ以前のようにとはいかないと思いますので、終息に向けて、少しでも協力はしていきたいと思います。

会社は全面リモートワークが終了し、一転して全面出社となりました。

実際のところ、リモートワークでも回ることは回るんですが、やはり、どうしてもスタッフの管理が難しいのですよねぇ…。
「正直、サボっているでしょ」と思うようなことも散見されるので、そのような措置となりました。
個人的には、リモートワークは通勤の往復にかかる時間がなくなるうえ、仕事もはかどるのでよかったのですが、まあ、致し方なしです。
ただ、これ、また年末に向かって感染者数が増えるなどとの不吉な声も聞こえ、再びリモートワークという可能性が全然あると思ってます。
果たしてどうなることか。

政治のほうも変化がありました。
菅総理の辞任に伴い、自民党の総裁選がありまして、岸田さんが新総裁、つまり新総理に就任しております。
管理人、政治のことはさっぱりですが(それ以外のことも)、なんとかよい方向に向かうようによい感じにしていっていただけるとよいなぁと思います。

さて、そんな中、一冊読了しました。
本当は、もっとずっと前に読み終えていたんですが、本業のほうが忙しく、なかなかレビューが書けなかったんですよねぇ…。
今回は、管理人初読みの作家となります伊藤潤先生の作品で、関東の覇者 北条早雲を主人公にした「黎明に起つ」です。

きました!久しぶりの北条早雲です!
あるじゃないか、北条早雲を扱った作品!(探せてないだけ)
素晴らしい!かっこいい!
めっちゃ面白かったです!
読むのが遅い管理人が、一週間で読み終えたくらい熱中しました。

伊東潤先生は、Twitterでフォローさせていただいてまして、その中での発言が興味深く、いずれかの作品を読んでみようと思っていたところ、本作がAmazonのレコメンドで出てきたのかな?「北条早雲か!」となりまして、その場で購入をポチりました。

管理人、生まれは越後(新潟)ですが、現在、東京に居を構えております。
しかし、NHK大河ドラマ「真田丸」の影響により、北条氏に対してあまり良い印象がありません。

「真田丸」では、4代目の氏政(高嶋政伸さん)と、5代目の氏直(細田善彦くん)が出るわけですが、氏政が過去の栄華とプライドにこだわったがために、結果、北条家を滅ぼすことになるし、息子の氏直は、父氏政の傀儡(かいらい)なだけで、なんの志もなさそう(すいません、知見のない管理人にはそう見えたという話なだけで、実際は違うのかもしれません)で、どうにもイマイチなんですよねぇ。

しかし、彼ら後北条の始祖である北条早雲は違いますなぁ…。
自分達のことしか考えない旧態依然とした者たちを見限り、民による民のための国を作ることを決め、実際に関東でそれを実現するっていうんだもの。

本作は、そんな北条早雲がまだ「伊勢新九郎(いせしんくろう)」という名で備中国荏原荘(びっちゅうこくえばらのしょう、今の岡山県井原市のあたりだそうです)にいた頃、12歳からスタートします。

以前、中村晃先生著「北条早雲~理想郷を夢見た風雲児~」のレビューの際にも書いた気がしますが、北条早雲という名は、本人が存命の頃には使われたことがなく、伊勢新九郎盛時(もりとき) → 早雲庵宗瑞(そううんあんそうずい)が存命中に使用していた名前とのこと。
嫡男の氏綱(うじつな)の代で、伊勢から北条を名乗るようになって、そこから北条早雲という名前が使われるようになったので、伊藤潤先生は本作中では「北条早雲」の名は使用していません。
いいですねぇ。

さて、新九郎、応仁の乱のきっかけになった室町幕府八代将軍 足利義政の後継者争いで、すったもんだの末、伊勢にとんずらしてしまった義政の義母弟 足利義視(よしみ)のもとに人質として送りこまれます。
なぜ、将軍の義母弟のもとに人質としていかねばならないのかはここでは割愛します。
管理人は、以前レビューした真保裕一先生著「天魔ゆく空」や、本作で、人物の相関関係を紙に書きながら整理して、やっと事情が把握できました。
複雑ですが面白いです。

その後、義母兄である足利義政から「変なことはしないから京に帰っておいで」という帰還命令に従って、足利義視は京に戻ることにし、人質である新九郎を伴って京に帰還するのですが、そこでまさかの事態発生…。
しかも、その件で相当に落ち込んだ後、気を取り直して挑んだ細川政元奪還作戦(これも詳細は割愛)でも、成功して喜び勇んで帰ってきたら、更なるまさかの事態発生…。

と、後の成功を知らずに読んだら、この時点では、新九郎は「持ってなさすぎ」で、どんだけ不幸を背負い込むんだよ、と思わざるをえません。

ただ、ここからの快進撃が凄い。

本作の前に読んだ今川義元、氏真親子の作品で「北条には、早雲さんの時にとんでもなく助けてもらった恩があるので、足を向けては寝れないよ」とされた小鹿新五郎の事件を皮切りに、下克上とされる伊豆での茶々丸の事件など、東下して関東の争乱を鎮静化させていく様は凄まじい。

その快進撃も、領民の生活を慮(おもんぱか)り、租税をそれまで一般的であった五公五民(収穫の半分が年貢)から、四公六民(収穫の4割が年貢)にしたりして、領民にとってもよき国としていくことを志し、それが実践されていくわけですから、戦に巻き込まれてしまうものの領民も支持していくわけです。

腹をくくって、下克上を決意した際の「武士のための武士が生きた時代を終わらせ、民のための為政者(いせいしゃ)としての武士の時代を呼び込む」の言葉、うーん、かっこいい…。

北条早雲というと「下克上」やら「梟雄(きょうゆう)」なんてイメージがあるから、なんだかダークな印象があったんですが、本作なんかを読むと、ほんと、よき領主であったと思うのですよ。

後半は関東を中心とした話になり、最後は、相模を支配していた三浦道寸(どうすん)との対決で、これはクライマックスに相応しい手に汗握る展開で一気読みしました。

あー、そして、最後の最後に「終章」という数ページだけのエピローグがありまして、泣きました。
いろいろと辛いことがありながら、それらを乗り越えて、領民のための国を作るために邁進した新九郎の労を労うかのようなその最後は、とても穏やかな気持ちにさせてもらえました。

ということで、本作ですけれども、盛り上がり箇所はいくつかありますが、管理人的にちょっとテンションが上がったのが、細川政元と新九郎に、わりと濃いめの接点があった点。

管理人、すっかり忘れてまして、本作の開始早々に細川勝元やら山名宗全、日野富子の名前が出てきた時には「あー!応仁の乱の入り口に新九郎かんでるのね!」と小躍りしてしまいました。

管理人、ちゃんと日本史の勉強はしていないので、この時代のことはおぼろげのままで、さすがに今回で覚えたかなぁ。
今回、初めて人物相関図を手で紙に書いて(アナログ感)、あのややこしい彼らのやりとりを理解したので今度こそは覚えていられると思います。
その相関図をなくさないようにしよう。

あとは、小鹿新五郎討伐のくだりもよかったですねぇ。
ちょうど本作の前に今川家に関わる作品を連続で読んでいたので「今川家よかったねぇ」というのと「そんな作戦でいけるかぁ!?」みたいな点でドキドキしました。
健気な阿茶さんがなんともかわいそうでしたが。

そうそう、本作では女性陣もよいです。
ともすると、こう、なんだか殺伐とした感じになりそうですが、女性との絡みもありまして、そりゃ、新九郎かっこいいですからね、イケメンは女子にモテます。
注目は菜穂さんと阿茶さんだなぁ。これ以上は言いませんけど。

その他、茶々丸討伐、伊豆三浦氏との対決なども関東を舞台にドカンと展開されて、最後までテンション高く読むことができました。

最終的に関東(および日本)がどうなるかは、歴史が語る通りですが、本作で説明される通り、宗瑞(ここからは後半の名前である早雲庵宗瑞でいきます)の遺志を継いだ息子 氏綱以降も、真に宗瑞が望んだ世は実現されず、結局、明治時代までお預けになったということは、宗瑞、先見の明がありすぎて、もはや未来人。
あの時代にその発想をし、実現に向けて行動したってのは凄く、ため息が出ちゃうなぁ。

下克上を最初に始めた人物、みたいな評価になっているようですが、そこには、日本の未来を憂いた末の選択というのがあるので、そちらを評価してもらいたいなぁ。

本作の読みやすさについては、最初以外は全然オッケー。
最初もね、これは、本作云々というか、史実がややこしすぎ。
最初の新九郎が足利義視の元に送られるくだりがそれなんですが、そこは、もう、ぼんやり理解でもよいのかもしれません。
が、今回、管理人がやったように、理解して読むとずっと面白いので、そうすることをお勧めします。
管理人、本作で理解できたので(相関図を手で書いて)、俄然、興味が出てきました。
この時代を、もっと、勉強していこう。

さて、そろそろ、恒例の映像化の妄想。
これはねぇ、NHK大河ドラマで一年間かけてやってもらうやつですねぇ。
本作を原作でどうですかね?NHKさん。
ネタがありすぎでしょう。
幼少の頃に、応仁の乱絡みで足利義視のもとに人質的に送りこまれるところからスタートとか、もう、それで、数話いけちゃう。
からの、お兄ちゃんのアレとか、もう20歳前まででもイベントてんこ盛り。
んで、そこからもてんこ盛り。
なので、既に過去に作られてるんじゃないかと思って、軽く調べてみたら、作られてないっぽい!?
まじか!?
助佐(黄金の日日)とか全然知らないんだけど、NHK大河になってるじゃん、北条早雲だめ?
(助佐は助佐で面白いですけども)
と思ったら、同じように思っている人が他にも多数いらっしゃるのね。
だよなぁ、NHK、出し渋ってんのかなぁ、どうでしょう本作を原作で。(二回目)
ラストは本作のラスト踏襲がいいよ、あー、いいねぇ。泣いちゃう。
早雲役は誰がいいかなぁ…って考えたら、ちょっとパッと浮かばない。
青雲の志を掲げた姿が様になっている若手俳優さんだな、誰かな、まあ妄想しとこう。

お、そうですね、ちょうど、この機会に政治の世界も変わるニュースがありましたし、どうでしょう、岸田新総理に、北条早雲のような高き志と、それを実践する行動力を期待して。

ということで、そろそろ終わりにしましょう。
もう、特に説明の必要がないであろう、戦国時代の始まるちょっと前、関西のほうから「この腐った世を変えてやるぜ」という青雲の志を携え関東制覇を成し遂げた、のちの北条早雲こと、伊勢新九郎・早雲庵宗瑞の活躍を描いた本作、是非、読んでみてください。
めちゃくちゃ面白いです。

あー、小田原城行きたい、伊豆のほう行きたい、コロナ明けたら行こう。

歴史には浪漫がある。

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