こんにちは。
相変わらず本業がバカがつくほど忙しく、全然休みがないんですが、帰宅中の読書と晩酌だけは欠かさず、それを癒しに生きている管理人です。最近とあるお店で飲んだ真っ赤なラベルの「雄町」(おまち)って日本酒がすごく美味しくてまた飲みたい気分満載です。どこのお酒だったっけかなぁ…。
さて、また前回の投稿からたいして日が経たないうちに早くも読了したということは、今回もかなり面白かったというわけなんですが、今回は管理人初読みの作家 真保裕一(しんぽゆういち)さんの作品「天魔ゆく空」です。
さらに管理人初の「戦国時代・幕末じゃないモノ」でして、戦国時代に突入するちょい前くらいが舞台になってる作品。
これまでずっと「戦国時代・幕末モノ」ばかり読んできた管理人ですが、ふと思ったのが「その時期の世の中の大勢を知ってるんで、それ前提で読んじゃってる」感。
戦国時代って「大名同士が覇権を争って群雄割拠→信長現る→本能寺の変→秀吉の天下統一→関ヶ原→大阪の陣→家康勝利→戦国時代終わり」みたいな流れがあり、幕末も「幕府ダメだ討幕だ→いやまて新撰組登場→坂本龍馬現る→薩長同盟→大政奉還→鳥羽伏見の戦い→徳川慶喜逃げる→戊辰戦争→五稜郭→西南戦争→侍の時代終了」みたいな、これらの流れが頭にある前提で読んでるので、ダメじゃないんですがちょっとそうじゃない感じにいってみたいなぁ、っていうのと、このサイトの何個目かで投稿してる「司馬遼太郎の日本史探訪」という作品で「戦国時代よりも前の時代も面白そうだなぁ」と思っていたので、まあ今回、いよいよそこにも手を出したという感じです。
そもそも、なんであんなに混沌とした戦国時代なんてのが発生したんだ?というのはちょっと思ってました。学生の頃に習ってたんですかね?さっぱり記憶にないですが。
そんなわけで、書店に行ったんですが、いざ買おうとなったものの、管理人、その時代の作品でよさげなタイトルが全く思いつかないわけです。ちょっとググッてみたものの、そもそもその時代の人物とか全然わからない。なんとなく名前を知っている北条早雲とか思い出して、関連書籍を調べたものの、なんだかよさげなものがない。
仕方がないので、管理人がとったのは、まさかの時代小説・歴史小説コーナーを作者「あ」から探していく作戦。一見、気の長い作業っぽく感じるかもしれないですが、背表紙に書かれたタイトルで、案外除外できるものなんです。だって「本能寺…」とか「徳川なんとか…」とか「新撰組なんとか…」みたいなのタイトル多いので。そういうのはパッと見で除外。
そんな感じで、タイトルからは内容が想像つかないものだけ、表紙とか、カバーに書かれたあらすじを見て目当ての時代の作品を探すという、とはいえまあまあ微妙な作戦で探したんですが案外すぐに「し」で本作を発見。表紙を見たら「おや!?」と思いましたね。なんか公家さんっぽいなりをした青年の絵が描かれてまして「これは引いたかな」と。カバーのあらすじみたいなのを読むと「応仁の乱で荒廃した…」と書いてあったので「ちょっと戦国時代近すぎか?」とか、「細川って?あの細川藤孝(ふじたか)とか細川忠興(忠興)の細川?」とか「しんぽゆういちさん?知らないなぁ(失礼)」とかあったんですが、上下巻あって読み応えもちょうどよさそうだしってことで購入。しかし、これが大当たりでした。
まずですが、著者の真保裕一さんが凄い方でした。管理人が無知なだけ、失礼すぎる。すいません。数年前、俳優の織田裕二さんが黒田康作って外交官役で主演して映画とドラマになったあのシリーズを書いてたり、他にもいろいろ書かれてて、ミステリー小説なんかが主戦場みたいなんですが、時代小説も数作書かれていて、本作がそのうちの一つでした。あんまり時代小説は書かれてないみたいですが、本作、非常に面白かったので、もっと書いていただきたいなぁ。他の時代小説作品も読んでみたいと思ってます。
さて、過去最高に長い前置きはこのくらいにして、そろそろ作品の話に触れたいと思います。
本作は、先にちょっと触れた通りなんですが、作品の冒頭に「文明4年」と書かれて始まるので1472年から、最後が「永正4年」と書かれてますので1507年までの約35年間を描いてまして、応仁の乱が1467年~1478年なので応仁の乱の後半以降、戦国時代に突入したくらいまでのお話です。戦国時代というのは厳密にいつからというのは決まっていないというか未だに議論されているらしく「応仁の乱の1467年からが戦国時代だ」「いやいや1493年の明応の政変からだ」とあるみたいですが、どちらにしても本作終了時には戦国時代には突入してるということになりますね。
あの斎藤道三が1494年生まれ、織田信長が1534年生まれ、今年のNHK大河ドラマで話題の明智光秀が1528年生まれなので、齋藤道三の一代前、信長や光秀の二代前の時期って感じです。
応仁の乱は戦国時代に入っていくきっかけになったと言われている大乱でして11年も続いたのだそう。
当時の室町幕府の管領(かんれい)だった大和・河内・紀伊なので今でいう奈良・大阪・和歌山あたりを守護していた畠山さんと、越前・尾張・遠江(なぜ美濃が中抜けしてるんだろう?)なので今でいう福井・愛知・静岡あたりを守護していた斯波(しば)さんの家督(かとく)争いから、土佐・讃岐・丹波・摂津・伊予なので今でいう四国と兵庫のあたりを守護していた細川勝元(かつもと)と、但馬・備後・安芸・伊賀・播磨なので今でいう兵庫・岡山・広島・三重の端っこあたりを守護していた山名宗全(やまなそうぜん)の勢力争いに発展して、そこから室町幕府の足利将軍家の後継者争いまで加わって、全国規模の争いになったものだそうで、なんでそんなことになったんだ?って気がしますが、まだ管理人もよくわかっていませんのでこれから学んでいきます。
本作でちょっと触れてた気がしますがそこに気をさく余裕がありませんでした。なぜ余裕がなかったかと言うと理由はありまして後述します。
管領ってなんぞ?という方に簡単に説明すると、将軍の次に偉い方だそうで、今でいうと官房長官みたいな感じなんでしょうか。政治の実際を取り仕切っていた人ですね。
応仁の乱というのは、上記の偉い人達の戦が京都を中心に行われたらしく、京都はもうボロボロの荒れ果てた荒野になったのだそう。
本作は、そんな状況の中、その応仁の乱の中心人物で東軍の指導者であった細川勝元の元に生まれた嫡男 細川政元(まさもと)が主人公になっている作品です。
この政元がですね、めちゃくちゃ頭が切れるんです。もうただごとではないくらいに。子供の頃から。
本作ではその政元の幼少時代からが描かれるんですが、なんてったって幼名が「聡明丸(そうめいまる)」ですからね。これ、実際もそうだったらしく、なんというか名は体を表すとはまさにこのことだなぁと思わずにはいられませんでした。神童なんてもんじゃないんです。ただ、ちょっと、いやだいぶ、クセが強いんです。いろいろと。
これも本当だったらしく、はたから見ると奇行に見えるような行動もたびたび見られたのだそう。本作でもそのあたりは描かれますが、本作を読んでいると奇行には見えず、それもある目的を果たすための知略の一つと思えるのと、本作に登場する人たちにもそう思う人が出てきたりして、ミステリアスキャラな感じになってたりします。
年齢を重ねるにつれその度合いもますます強烈になっていくんですが。ああ、真保裕一さんてミステリー小説が得意そうなので、そのテイストがそのあたりにも表れてんだなぁきっと。
政元の出自に関してのエピソードもあって、これも政元のミステリアスさに一役買ってました。出自に関してのエピソードも実際そうだったらしく、それについては諸説あるのでしょうけど、本作では本作なりの結論を出してくれてる…と思ってんですがどうなんだろうアレは。まあ読んでみてのお楽しみです。
内容は、基本的には史実を踏襲しているのだと思います。それらを、さも実際にそこで見たかのように描いていくので非常に面白かった。
管理人が常々疑問に思っていた「そもそも、なんで藤原氏とか足利氏って将軍が統制してきた日本が、戦国時代なんて実質将軍不在の混沌とした状態に陥ったんだ?」というのが理解できました。このレビューでは説明しないですけども。
こういうのって歴史の授業で習ったのかなぁ。なんだか「応仁の乱」ってイベントだけを覚えさせられ続けるような授業だったような気がしてならない。忘れているだけかもですが。
この時代、本当にイカれてて、親子・兄弟で平気で殺し合いするんですよね。戦はもちろん暗殺とかも平気で。足利将軍家なんてそんなのばっかり。どんだけ強欲なのか。
また、家や自分のためなら平気で寝返ったり、敵と通じていたりするので、もう誰もが疑心暗鬼になってたのかもなぁと思えて仕方ありません。誰も信用ならない世の中とか、マジで生きてて辛すぎですね。
でも、そんな様子が存分に描かれつつ、その中で政元の何かを悟っているかのような様が時に狂気じみてて面白かったなぁ。
もちろん、本作では細川勝元・山名宗全の他にも応仁の乱といえばこの人という人も多数出てきます。将軍足利義政の正室日野富子なんかは相当この作品を盛り上げてくれます。この人も怖い。女性についての話も本作では魅力の一つですね。政元の姉 安喜(あき)も本当にね、もういろいろと…。
全般的に非常に面白くて、もう夢中になって読んだんですが、難点が二つありまして、まず一つ目が「人物の名前が読みづらいというか読めない」。
当て字っぽい読み方だらけで、初出の際にはルビ(ふりがな)がふられるんですが、その後は、相当しばらくしてからでないとルビがふられないので、読み方を確認するために、何度もルビがふられているページをいったりきたりしてました、最初は。
途中から諦めまして、独自読みで読み進めてたりしました。時代小説・歴史小説ではあるあるなんですが、本作では特にそれがキツく感じましたね。
そして、一つ目の難点と相互に影響してそうですが「人物の相関関係がわからなくなる」です。
登場人物がめちゃくちゃ多いんですね。それでいて、名前の読みを覚えてられないし、一番混乱するのは、同じ苗字でも、系統が違うとかで、人物によって敵と味方になってたりするので「◯◯家の者だから味方だよね」とかが通じない。
しかも、内容のところで説明した通り、敵であった者が、数ページ後に味方になってたり、逆も然りなので、この相関関係についても、ぼんやりになりながら読む局面がありました。
これから読む方にアドバイスするとしたら、作品の巻頭に「登場人物」というページが1ページだけ用意されているので、そこに書かれている人だけ気にして、後はぼんやりにしていってもなんとかなる…ような気がするので、その程度でいいかもってことです。
もちろん、一番いいのは、相関関係をきちんと把握して読んでいくのがいいです。実は管理人はもう一度きちんと相関関係を把握して読み進めてみたいと思っていたりします。
ただ、それ、この時代の人物を知ってる人でないと、すごく時間がかかる気がするんです。
数ページしか出てこない人もたくさんいますからね。最初はそういう人もきちんと記憶しながら読んでたんですが、途中からなんとなく「この人は一瞬だけキャラじゃね?」みたいな勘どころが見えてきて、ある程度、力を緩めて読みました。
なので、本作の面白さを余すところなく堪能したかと言われるときっとそうじゃないんだと思います。それでも、肝になる部分は理解しながら読めてた(つもり)ので非常に面白かったです。
そういう意味では、本作、映像化したらその人物相関関係問題を顔を覚えるという形で吸収できて、全然イケると思うんですがどうなんですかね。応仁の乱あたりはイマイチ刺さらなそうではありますが…。
調べたら、1994年のNHK大河ドラマ「花の乱」というのが、本作で主要人物になる日野富子を主人公にしてて、三田佳子さんが富子を演じてた作品があるんですね。しかし、視聴率は奮わなかったとか…。今なら管理人絶対見ますけどね。
ということで、今回もまた愚にもつかないレビューになりましたが、本作を読んで、俄然、戦国時代前にも興味が出ました。知見がない状態なので、知ることばかりで先を読まずにはいられない感じになるのですよね。しばらく、この手の作品を読むかもしれません。
管理人と同じように戦国時代前の知見があまりない方はもちろん、知見がある方が読んでも、いや、知見がある方が読んだら人物相関関係問題がない気がするので、より楽しめそうな本作、是非読んでみてください。楽しめました。
次も戦国時代前の作品にしよっと。何がいいかなぁ。
歴史には浪漫がある。
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