歴史上屈指の梟雄(きょうゆう)と呼ばれるのでどれほどの悪人かと思ったら全然そんなことなくて武勇も治政も素晴らしくむしろ好感度爆上がりな「北条早雲〜理想郷を夢見た風雲児〜」

中村晃

こんにちは。

当初5月6日までということで発令された非常事態宣言が、5月31日まで延長と発表がありましたね。日々発表される感染者数は徐々に減ってきてるようです。外出自粛の要請は効果出てるんじゃないですかね。早く終息して、以前の日常に戻って欲しいなぁと切に願うばかりです。

ゴールデンウィーク真っ只中ですが、管理人は完全にSTAY HOMEしてまして、いい機会なので溜まっている仕事を片付けつつ、部屋のレイアウト変更を試みたものの、設計不十分で元に戻すハメになり、この休み中のレイアウト変更は諦めて読書してたら、早くも一冊読了することができてしまいました。速っ。

読むのが遅い管理人が、STAY HOMEとはいえ、こんなに速く一冊読み終えたのは、なんのことはない「非っ常に面白かった!」からです。

さて、そんな今回の読了作品は、中村晃さんの「北条早雲〜理想郷を夢見た風雲児〜」です。
早雲と書いて「そううん」です。

今回の作品は、特に有名だとか、賞をとってるとか、そういったことは一切なく、しかも、古い作品なんですが、このところの「戦国時代・幕末以外への興味」から端を発し「なんかいい作品ないかなぁ」と探していた折にたまたま発見した作品で、もうタイトルと表紙だけで買いました。

もうストレートに「北条早雲」ですからね、タイトルが。
そして、表紙がガチな肖像画。いま風のイラストでないことが非常にストイックな印象で、管理人、ほとんど知見がないのですが、非常に興味のあった北条早雲が勉強できるのではないか、とちょっと期待して買ったら、大当たりでした。いやぁ、我ながら、良書の引きがいいなぁ。
以前読んだ近衛龍春さんの「直江兼続と妻お船」といい、本作といい、PHP文庫さんはわりと管理人は肌に合うみたいです。
本作がどのくらい売れたのかわかりませんが、評価できる良作品だと思いますよ。

さて、内容ですが、まあ、タイトルの通り、豊臣秀吉の小田原攻めによって滅んだ戦国時代の関東の覇者 北条家の祖である後北条家の初代 北条早雲の生涯を扱った作品でして、早雲の幼少期から最期に至るまでが、(多分)余すところなく描かれてます。

(ノーマルの)北条氏と後北条氏は、大きく違いがありまして、そのあたりは、本作を読むことでちょっとわかるのと、管理人は読了後にちょっぴり調べてよーくわかりました。

それと、さらにわかったのが、早雲は存命中は「北条」を名乗っていたことはなくて、「伊勢」のままだったらしいということ。
「北条」というのは、早雲が亡くなった後の長男の代から使い始めたのだそうで、その流れから「北条早雲」と呼ばれるようになったらしいです。

「伊勢」というのは早雲の姓で、子供の頃は「新九郎」という名前だったので、早雲を名乗るようになるまでは、本作中も「伊勢新九郎」で話は進みます。
では、いつ、「新九郎」が「早雲」に、「伊勢」が「北条」になるか、ということなんですが、「新九郎」が「早雲」になる話は本作中で語られます(これも諸説あるのだろうか)。「伊勢」が「北条」になる話は、実際は前述の通りなんですが、作中にそう呼ばれるようになるだろうくだりはあって、その後は「北条」と名乗ったかなぁ?もしかしたら、作中も「北条」とは名乗っていなかったかもしれない。「早雲」と書かれていたと思うので気にしなかったなぁ。
いずれにせよ、そのあたりのエピソードも描かれるので、北条早雲について知りたいという人には、勉強になると思います。

北条早雲についての管理人の前情報は「京の都あたりからどんどん東に侵攻していって最終的に関東を統べるようになった」くらいしかなく、出自も知らなければ、関東に到達するまでの過程も知らない状態だったのが、本作でよくわかりましたねぇ。
「応仁の乱」への早雲の関わり方も作中語られ、非常によくわかりました。

内容についてはネタバレになるのでこのくらいにしときますが、北条早雲という人に対しての管理人のイメージは、本作で完全に覆りました。めっちゃいい領主なんじゃないかと思います。

本作を読むまでは、美濃の蝮(まむし)こと斎藤道三や、信貴山の魔王こと松永”弾正”久秀と並ぶ梟雄(きょうゆう)と呼ばれていたので、さぞかし悪党ヅラで、裏切りやら冷徹な行いを繰り返してのし上がった輩(やから)かと思っていたら(司馬遼太郎さんの「国取り物語」を読んでからは斎藤道三についてはさほどそのイメージはないんだけども)、なんか、全然そんなことない印象。

確かに結果だけ見れば、一介の若武者が様々な手段を駆使して立身していって、最終的にはかなりの力を持つことになるわけなんだけど、それらは本作を読む限り、至極真っ当な理由で、かつ、正当な手段(戦をすることを含めて)を用いて実行されてきたと思えるし、むしろ、領国の民・百姓にとってはよきリーダーだったんじゃないかと思えてならない。実際、そうだったんじゃないですかねぇ。その政治手腕や考え方は見習うべきものがあるなぁと思いながら読みました。

しっかし、この早雲を皮切りにこの後五代まで続いた北条家が、秀吉に倒されて滅ぶっていうのがなんだかなぁ。四代目の氏政(うじまさ)が妙なプライドを固辞せずにいれば、その後も長く続く可能性はあったというか、高かったんじゃないかなぁと思うのに残念。五代目の氏直(うじなお)が、もっとしっかりしていればというのはあるけれど、まあ、優秀な父親に意見するのは難しいやね。

さて、早雲について話し過ぎると余計な先入観を持って読むことになりかねないので、これ以上は控えることにしますが、内容にあまり触れないレベルで、本作品の良さをお伝えします。

まず、冒頭に言った通り、北条早雲の生涯が、おそらく余すところなく描かれている点。少年期から最期を迎えるまでが網羅されているので、どう育ち、どう成長していったことで、最終的にああ考えるようになったか、あのように生きたか、が非常によくかわりました。
早雲のキャラ作りに関しての著者中村晃さんの創作の程度は測りかねますが、わりといいセンいってんじゃないでしょうか。いや、いっていると思いたい。

次に、作品全般が資料から得られる情報に従って、事実に近しい形できちんと描かれているだろうと思える点。もちろん、細かいところは、たくさんデフォルメされているのだと思いますが、過剰な演出は控えて、資料から得られる情報と著者の見解をいい具合に織り混ぜて、フィクションとノンフィクションがいいバランスに配分されているなぁと思います。少なくとも管理人には丁度良かった。

そして、これは、今の管理人ならではの話なんですが、この作品で扱われる時期というのが、本作の三つ前に読了した作品、真保裕一さんの「天魔ゆく空」で扱われる時期の、ちょっと前から丁度被るところくらいにあたりまして、「天魔ゆく空」では詳しく語られなかった「応仁の乱」のきっかけとなる細川勝元(「天魔ゆく空」の主人公 細川政元の父)と山名宗全の争いの詳細が描かれたり、なんなら、早雲もちょっと(だいぶ?)関わっていたりするものだから、俄然、読むほうも「おお!?」と熱を帯びることになりました。
ここは、管理人にとっては、かなりポイントが高かったかなぁ。
畠山(はたけやま)氏、斯波(しば)氏の家督争いに端を発し、足利将軍家の家督争いを巻き込んで「応仁の乱」に至っていく流れが「天魔ゆく空」では十分に理解できなかったんですが、本作でよくわかりました。(まあ、「天魔ゆく空」は応仁の乱の中盤からスタートだし、主人公が、応仁の乱の主役 細川勝元の息子の政元なので、仕方がないっちゃ仕方がないのだけども)
まあ、早雲はその京のごたごたを尻目に、東に東にと進むので、そこまで「応仁の乱」には絡まないのですけどね。

あとはよい点とまではいかないまでも、管理人好みのあの要素がこの手の作品にしては、わりと出てくる点も見逃せないかもです。そうです、あの要素です。北条といえば風魔ですな。ほんとにいたんだなぁ、風魔。

以上かな、本作のよい点。
他にもあると思いますが、まあ、それは読んで感じていただければということで。

ということで、また、だらだらと愚にもつかないレビューとなりましたが、冒頭にもお伝えした通り、著者の中村晃さんは賞をとったりはしてないようですが、本作は北条早雲を知るには非常によい良作だと思います。是非読んでみてください。面白いですよぉ。

ところで、北条早雲を主役にした映画ってないっぽいですね?
結構、主人公にしてもいいんじゃないかと思えるんだけどなぁ、なんでだろう?
あったら観ようと思ったんですけどねぇ。

早雲寺行きたいなぁ。
俄然、小田原・鎌倉方面に聖地巡礼したい気持ちになりました。
三浦半島方面にも三浦道寸ゆかりの地とかたくさんありそうだし。
うん、コロナが終息したら行くことにしよう。

歴史には浪漫がある。

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