淫虐暴戻な会津藩主 加藤明成を仇とする女達のために隻眼の剣聖 柳生十兵衛が立ち上がる!忍法帖シリーズで一番面白いのはこれかもしれない!「柳生忍法帖」

山田風太郎

今回は、山田風太郎の忍法帖シリーズ第10作目にあたる「柳生忍法帖」です。

管理人にとってはだいぶ久しぶりの忍法帖でしたが、いやぁ、やっぱり山田風太郎作品は面白い!

あまりに面白くって、一気に読んでしまったので、上下巻合わせて900ページ弱の作品でしたが、一か月かからなかったんじゃないかなぁ。管理人としては早いペースで読了しました。それくらい面白かった。

なんというかなぁ、山田風太郎作品は、毒があるのがいいですね。キャラクターのキテレツぶりとか、エログロさとか、なんかそういう妖しさが管理人非常に好きです。

この作品は前評判とか全く知らずに、たまたま書店で上下巻売っていたので購入してまして、まあタイミングを見て読もうかなぁくらいの気持ちでいたんですが、「壬生義士伝」を読了後、数ページチラッと読んだら、あっという間に山田風太郎ワールドにやられまして、チラッとどころか最後まで読んでしまったという次第。

とにかく、そのくらい面白かったということをまずはお伝えしまして、なるべくネタバレしないように内容を簡単に説明します。

時代は「寛永十九年の春〜」と始まるので、西暦だと1642年、徳川三代目の家光が将軍をやってる頃の話になります。

会津藩はかつて賤ヶ岳七本槍(しずがたけななほんやり)の一人に数えられた加藤左馬助嘉明(かとうさまのすけよしあき)が治めてたんですが、代替わりしまして、息子の明成(あきなり)が治めるようになります。

しかし、この明成がまあ酷くて、この投稿のタイトルにある通り淫虐暴戻にもほどがある輩なんです。淫虐暴戻は、いんぎゃくぼうれいと読みまして、もうその四文字から醸し出される通り、エロいわ惨虐だわでどうしようもないわけです。

明成がそんな調子なものですから、ずっと加藤家に仕えてきた堀主水(ほりもんど)さんて方がいたんですが、その方が愛想をつかして、堀主水さんに同意する部下達らと家族を連れて会津藩を出てしまいます。

それに腹を立てた加藤明成は彼らの捜索に乗り出します。

会津から出た人たちは皆、日本中の各所に散ったみたいなんですが、堀主水さんと近しい部下達は高野山(和歌山にある超有名なお寺。金剛峯寺というのが正式名称のようです。)に隠れてお坊さんをやってました。が、明成に見つかって捕らえられてしまいます。

ちなみにこの時、奥さんや娘といった女性陣は、鎌倉の東慶寺という尼さん専用のお寺にいます。

そして、彼らは処罰されるために江戸に連れていかれるわけですが、彼らを江戸まで連れて行く連中というのが、加藤明成直轄の、賤ヶ岳七本槍ならぬ会津七本槍なるやばい輩で、その道中、鎌倉の東慶寺で尼さんをやってた奥さんや娘たちに面会を許した…かと思いきや、超絶酷いことをするわけです。

その超絶酷いことをされる事態を受けて、尼さんをしてた堀主水の奥さんなどを含む女性7人が加藤明成への怨恨を募らせるわけなんですが、そこにとある人物からの密命を受けて、徳川家が相談役と仰ぐ超偉いお坊さん沢庵和尚(たくあんおしょう)と隻眼の剣聖 柳生十兵衛が彼女らの前に現れて、加藤明成、会津七本槍を含む芦名衆らと江戸と会津をまたいだ超絶バトルを始めるってそんな感じです。

なんだか、まあまあ長く内容を書いてしまいましたが、これほんの導入なのでご安心を。これ以降で、たっぷりと山田風太郎ワールドを堪能できます。

この作品、この時点で出てくる柳生十兵衛も沢庵和尚も加藤明成も堀主水も実際に存在した人物で、史実も上手いこと絡んでるあたりが、ほんと山田風太郎さすがって感じなんですが、さらにこの他にも凄い人物を絡めて来るのでほんと楽しい。

さすがに会津七本槍は架空ですが、忍法帖らしさとなる忍法感は彼らが出してくれます。ただ、キテレツ感は他の作品に比べると割と大人しいかなぁ。まあ、他作品の忍法がヤバすぎるという話もありますが。(後にこの作品が元々は「尼寺五十万石」という作品名で連載されていて、単行本化の際に「柳生忍法帖」に変わったと知って、ああ、だから忍法感薄めなのねと納得。)

この作品、管理人は今のところ忍法帖シリーズで1番好きな作品です(これを忍法帖シリーズとしていいのかちょっと微妙ですが、まあ忍法帖シリーズとうたってるのでよしとします)。まだ忍法帖シリーズ全作品を読んではいないんですが、珍しいのか唯一なのか、本作は全般的に他の忍法帖作品には見られないあるところがありまして、山田風太郎らしくないといえばらしくないんですが、管理人はこのほうがよいなぁと思ってます。それが何かは読んで確認してみてください。この作品を紹介したwikiには書かれてしまってますが。まあ、毎回こうであると、それはそれで驚きがなくてだめかもしれないなぁ、とも思ってます。

主人公(のはず)の柳生十兵衛はヒーロー感満載です。カッコいいです。相対することになる会津七本槍は、まあ予想通りいろいろ凄いんですが、その後ろに控えてるのがそれ以上に凄いのと、ここまでに紹介した人物以外で凄い有名な人物が何人か登場してコアな部分に関わってくるので、歴史好きはニヤリとするんじゃないかと。

ネタバレを避けるため、内容についての紹介はこのくらいにしますが、この作品、忍法帖シリーズの中では今のところ一番映像化しやすいんじゃないかと思うんですよね、先に言った山田風太郎らしくない点も相まって。まあ、エログロはあるんで、そこはそのままってわけにはいかないんでしょうけど。と思っていたら小沢仁志さん主演で「くノ一忍法帖 柳生外伝」なる作品で微妙に映像化はされてました。なぜかくノ一忍法帖シリーズの一つとして作られているのが気になりますが、観れるようなら観てみます。

「映像化はそれくらいなのかぁ」と思っていたら、なんと、甲賀忍法帖をバジリスクという作品名で漫画化したせがわまさき先生が「Y十M 〜柳生忍法帖〜」という作品名でまた漫画化してくれてました。さすがです。今度、読んでみます。

あ、そうそう、読了後に、本作で活躍した柳生十兵衛を山田風太郎先生は違う忍法帖でも描いているという情報を聞きつけ、「そりゃ読まなきゃ」と調べてみたら「おぼろ忍法帖」という作品らしく、早速買おうとググッたら出てきたのが「魔界転生」。当初「おぼろ忍法帖」として書いていたものを後に「魔界転生」に変えたらしく柳生忍法帖とは逆パターンのようです。

しかし「魔界転生」はですねぇ、管理人まだ読んでないんですが、ちょっと読むモチベーションに至っておらずでして。なぜかといいますと、過去にレビューしてる「武蔵野水滸伝」という作品が転生をベースにしてるんですが、これがあまりに微妙な内容でして、ちょっと転生をベースにしたものに抵抗を持っております…。

とはいえ、山田風太郎先生曰く、「自身の最高傑作」ということなので、やっぱりこれは読まなきゃいけないですね。読みましょう。読んだら、レビューしますね。

ということで、長々と好きなことを書いてきましたが、柳生忍法帖は忍法帖シリーズの中で管理人イチオシの作品になりましたので、是非読んでみてください。山田風太郎ワールドを堪能できて、エンタメ感があるおすすめ作品です。

やっぱり、山田風太郎は面白いなぁ。

歴史には浪漫がある。

ノンフィクション度
1.5
奇想天外度
4
サムライ度
2.5
忍者度
3.5
エロ度
3
管理人満足度
4.5
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