戦国時代の三大梟雄の一人と言われる父直家の後を継いでのちに豊臣政権の五大老にまで出世したが関ケ原以降のほうが彼の性に合っていたのかもしれないと思えた秀家の姿を描いた「宇喜多の楽土」

木下昌輝

こんにちは。

すっかり暖かくなって、花粉も猛威を奮っております。
鼻がムズムズしてどうにもなりません。
東京の花粉はキツイらしく、その理由はアスファルトばかりで土がないことで花粉が土に吸収されないからと聞いたのですが、だとしたら、花粉を吸収して土に還すとかそういうコールタールを開発したら、超絶ヒット商品になるのかなぁと無駄にぼんやり考えているITエンジニアの管理人です。

コロナのほうですが、ワクチン接種の開始から一か月くらいが経ち、関東の緊急事態宣言も解除になりそうなんですが、収束の気配があるということなんですかね。
緊急事態宣言が解除になったからといって、堰を切ったように飲みにいくつもりはないですが、早く普通に飲みに行けるようになりたいなぁと思っておる管理人です。
管理人がワクチンを打てるのはいつになるのか。

さて、そんな中、今回も、前回の投稿から時間を開けず読了となりました。
今回は、著者自身が「二匹目のどじょうを狙った」と公言したという潔さに惹かれて読みました。
以前読んだ「宇喜多の捨て嫁」に続く宇喜多家を扱った作品で木下昌輝先生の「宇喜多の楽土」です。
久しぶりに戦国の時代に帰ってまいりました。
面白かった!

まずですね、本作のレビューに入る前に、以前読んだ「宇喜多の捨て嫁」についてなんですが、これ、めちゃくちゃ面白くて、これまでに管理人が読んだこのブログの全作品群の中でも、ベスト3に入るかもしれないくらいの面白さでして、是非、おすすめです。
読んでいない方は、読むことをおすすめします。

そして、本作は、その「宇喜多の捨て嫁」でキーとなった宇喜多直家(うきたなおいえ)の息子、宇喜多秀家(うきたひでいえ)が主人公なんですが、この宇喜多家のお二人、管理人は以前レビューした「宇喜多の捨て嫁」と本作「宇喜多の楽土」でしか、その活躍を知らないんですが、どちらもめっちゃすごい人。

まず、父の宇喜多直家は、戦国時代の三大梟雄の一人に数えられるくらい有名で、とにかく、義理も人情もなく(なさそうにみえる)、清々しいほどの打算的な動きした人。
結果だけ見ればそう(打算的)で、実際もそうなのかと言われると今となっては当然わからないものの、それについての木下昌輝先生なりの解釈を描いたのが「宇喜多の捨て嫁」です。
果たして、本当に周りから見えているような非情な人物であったのか否か。
そのあたりが、オムニバス形式で語られまして、各話で立てられていくフラグが回収されていって、最後はすべての点が線で繋がる様がすごいです。
また言いますが、読んでみてください、めちゃくちゃ面白いです。

その息子の宇喜多秀家が本作「宇喜多の楽土」の主人公なんですが、この宇喜多秀家もまた、のちに豊臣秀吉政権の五大老の一人になった人。やべーです。
五大老といえば、徳川家康、上杉景勝、前田利家、毛利輝元、宇喜多秀家の五人ですよ。
その五人の中に入ってしまうような人。

改めて見るとすごいなぁ…。
徳川家康、上杉景勝はこのブログ内でもかなりの頻度で出てくるすごい人なので説明不要かと。

前田利家と言えば、加賀百万石です。
実際に百万石を超えたのはその息子達の時代かららしいですが、この手の作品には必ず出てくるすごい人。
豊臣秀吉亡き後は、徳川家康か、前田利家かと言われたくらい凄かったんですよね、確か。
秀吉に、息子 秀頼の後見人に指名されるくらいですから相当なものです。

そして、毛利輝元といったら中国地方の王様でしょう。
後の関ケ原の合戦では西軍の対象に担ぎ上げられるくらいですから、それはもうとんでもない。

そして、五大老の残りの一人が本作の主人公 宇喜多秀家です。
いや、すごい。

本作は、そんな宇喜多秀家が11歳のころ、ちょうど、本能寺の変で織田信長が討たれた一か月後くらいで、そんな秀家が豊臣秀吉に与するところから始まります。
本能寺の変が起こったのが1582年の6月なんですが、同じ年の1月に父 直家が亡くなってまして、つまり、家督を継いだ直後の11歳のちびっこの時に本能寺の変がおこった、ということになります。
大変な境遇だなぁ。

史実で、宇喜多秀家は愚直なまでに豊臣秀吉に尽くすことになるのですが、それを決定づけるエピソードが本作の冒頭で描かれてまして、これは、木下昌輝先生の創作によるものなんだと思ってますが、史実にある本作品後半の出来事に効いてくるあたりが絶妙で、その部分では読んでいて思わず鳥肌が立ちました。
あれが後半のアレにつながるとは…です。
宇喜多の捨て嫁」で炸裂しまくったフラグ立てと回収の技が発揮されてます。

作品全般は、奇をてらわずに、史実に沿って進行していきますが、本作で描かれる宇喜多秀家は、非常によい人物で、好感が持てます。実際はどうかわかりませんが。
父 直家が下剋上によって権力を得たことで地元民からあまり支持を得られない状況であったことから、流民や牢人を受け入れて力をつけようとしたものの、毛利家との所領をめぐる争いもあり、それらを養う土地がないため、干拓事業をおこなって土地を広げる施策をとったり(これは父 直家のころからの事業を引き継いだものだが)、秀吉からの依頼とあれば、四国や九州、関東といった日本国内はもとより、二度の朝鮮出征のいずれも参加(一度目は総大将として)してたり、本当にすごい人。
もっと有名になってもいいんじゃなかろうか。
管理人が知らないだけで有名ではあるのか。

最後は(といっても、結果、秀家の人生に於いて、それはわりと前期のことになってしまうのだが)関ケ原の戦いで西軍として参加して、あの結末になるのですが、あれも、本作を読んでいると、あの結果は秀家にとっては初めから予想されていたもので、悲壮的な覚悟を持って挑んだものであり、しかし、そういう形にせざるを得なかった秀家の苦悩を考えると、なんだか切なくなりました。

関ケ原の戦いの描写は、完全に宇喜多秀家目線で語られてまして、これまで、他作品でもたびたび目にした関ケ原の戦いを、管理人がこれまで目にしたことがない宇喜多秀家の立場で追えるため、非常に面白かったです。

後年の秀家については、本作で初めてそれを知りましたが、ある程度、苦労はしたと思いますが、彼にとってはよき選択だったのかもしれないと思いました。
しかし、生まれながらにして、それなりの暮らしをしてきた人が、よくもああいった選択をし、そのままでい続けられたなと思います。
宇喜多家の嫡男として生きねばならなかったために、人生の三分の一ほどはその役割を果たすことに心血を注いだものの、心根の部分は、冒頭のエピソードにあるような優しい気持ちの持ち主だったために、後年がああいう形になったのは、実際がそうなのかはわからないものの、本作のような秀家の人物像の解釈ではなるほどねと思えます。

しかし、よくよく考えると、結局のところ、宇喜多家というのは、父直家が下剋上を果たし権力を有した後、その子 秀家で絶頂期に達し、関ケ原の戦いを契機にメインストリームから外れて、以後、表舞台には出てこなくなったことを考えると、その栄華は非常に短かったのだなと思えます。
結局、栄華を誇ったのは、二代ってことですよね?
豊臣政権の五大老にまで上り詰めたし、関ケ原の戦いでは西軍の最大勢力だったんだけどなぁ。
それが、あっという間にああいうことになってしまうということを考えると、本当にあの時代というのは大変な時代だったのだなぁと思えます。

本作のタイトルにある「楽土」は作中に明言はされないですが(たしかそうだったかと)、心血を注ぎずっと守り続けた自身の領地ともとれるし、拡張を進めた未来に出来上がる干拓の土地ともとれるんですが、管理人としては、最後に辿り着くあの場所がそうだったのかなぁと思っています。
果たして、秀家は「楽土」に辿り着けたんですかねぇ。

全般的には、激動の日々の様子に先を読みたい気持ちが先行する作品でしたが、最後は心穏やかな気持ちで読み終えることになりました。

まったくの余談ですが、宇喜多という苗字は、その後、浮田という形に変わったそうですね。
浮田さんて名前、以前の仕事の取引先にいたんですよねぇ。
もしかして、宇喜多家の子孫なんじゃなかろうか。
その時は、そんなことは一切気にしていませんでした。
連絡とれないかなぁ、聞いてみたいんだが。

さらに余談ですが、本作のカバー表紙の絵にも描かれていて、この記事のアイキャッチ画像にもなっている宇喜多家の旗に書かれた「兒」の文字は、児文字(じもんじ・じのもじ)というそうです。
知らなかったぁ。あれ(兒)は、「じ」と読むんですねぇ。
この字を使うようになった理由については諸説あるようでして、そのあたりはググってみてください。
管理人、調べましたが、どれも確証は得られない感じです。

さて、そろそろ締めにかかろうと思いますが、今回は、前作「宇喜多の捨て嫁」のようなオムニバス形式ではなく、ストレートな歴史長編になっています。
前作に比べると、オムニバス形式でない分、点と点が結びついて線になっていく様の驚き度は薄い印象ですが、それでも、そういった要素自体はあり、且つ、あの時代を十二分に楽しめる歴史小説になっているので、楽しめること間違いありません。
実際、読むのが遅い管理人が、一週間くらいで読み終えたくらいですからね。

宇喜多直家・秀家を主人公にした映像作品ってないのかなぁ。
ないっぽいなぁ。今後、出てくるかなぁ。
話のネタはわりとありそうなので、映像化できるような気がしますけどねぇ。
期待して待つことにします。

ということで、今回も愚にもつかないレビューとなりましたが、豊臣政権の五大老の一人である宇喜多秀家の生まれながらにしての苦悩と活躍を描いた本作、面白いので是非読んでみてください。

歴史には浪漫がある。

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