「村上海賊の娘」の作者 和田竜さんが2007年に発表し、2012年には野村萬斎さん主演で映画化もされた作品。
他の作品と同様、主要人物は実在し、内容も史実に沿っているんですが、本作は、主人公ののぼう様 成田長親(なりたながちか)さえも実在した人物であるので、和田竜作品はどれも歴史浪漫感があるんですが、よりそれが感じられる作品。
なんというか、史実の間を埋める出来事や登場人物間のやりとりの「実際、こうだったかもよ」感がより一層強い感じです。
時代は豊臣秀吉が天下統一を目前にした頃。
ほとんどの大名が秀吉に臣従して、残りは関東のあたりを支配していた北条家だけになったのだけれど、北条家は最後まで秀吉に臣従しない姿勢をとったために、秀吉が「あぁー!もう、アッタマにきた!北条やっちまえ!」と北条征伐に乗り出すことを決めます。
4万人くらいの北条に対して、日本中から総勢25万人とか言われる超絶大軍を小田原に集結させる容赦ない作戦。
この作戦に秀吉は可愛がっていた臣下の石田三成を参加させるんですが、この石田三成、後に関ヶ原で徳川家康に敗れるだけあって、政治や財務はできるんだけど、戦(いくさ)は下手なんですね。
目立った武功がない。
そこで、北条の支配下にあった、今の埼玉県行田市のあたりに忍城(おしじょう)というお城がありまして、秀吉はその城を石田三成に落として来なさいと指示します。
絶対勝てるようにすごい人数を与えて。
武功をあげさせようとしたわけですね。
そこで標的になってしまった忍城を舞台にした戦いがこの作品です。
忍城の城主は成田氏長(なりたうじなが)という人なんですが、この人は北条氏に呼ばれて小田原城に行ってしまっていて、更に他も城代がイマイチいないものだから、この作品の主人公 成田長親が城代をやるはめになってしまって、さあ大変。
どう大変かというと、この成田長親という人、農民から「でくのぼうののぼう様」と言われるくらいダメで愛すべきいじられキャラ(笑)。
だいぶ困った感じで物語は始まります。
最終的には史実通りになるんですが、そこまでの話が本当に上手く描かれていて、冒頭に書いた通り「本当にこうだったんじゃないか」と思ってしまいます。
いや、大筋は史実通りなのはきっとそうなんでしょうけど、細かいところのことですね。
実際はどうなのかなぁ、丹波(たんば)や、甲斐姫(かいひめ)とか、あんな感じだったのかなぁ。
そもそもの長親も。
作品の感想ですが、とりあえず、あれですね、ダメなリーダーだと周りが頑張るからどうにかなるんですかね(笑)。
でも、狙ってるのか狙ってないのか、多分、後者だと思うんですが、各局面での長親にキラリと光るものがあるのがまた…。
あれ本人は狙ってないですよね?
しっかしまあ、甲斐姫かわいいのに、長親はなぁ…。
靱負(ゆきえ)もなぁ…。
ネタバレするのでこれ以上はやめますが、和田竜作品らしくエンタメ感があり、忍城攻防戦の詳細や、その頃の世の情勢がよくわかって歴史の勉強にもなる非常に面白い作品です。
まあ、映画化してるくらいだから、そりゃそうですよね。
あ、映画化といえば、管理人としては、長親は野村萬斎さんじゃないんですよねぇ。
だって、長親はでかくてボーっとしてるイメージなんだけど、野村萬斎さんはちょっと違いますよね。
いや、凄いダメなわけじゃないですけどね。
誰が適役かなぁと考えてんですが、それはそれでイマイチいないんですけどね。
雰囲気、阿部寛さんが思い浮かんだんですが顔のイメージが違うし、皆さんはどう思いますかね?
あ、能はリアルに踊れなくて良いと思うんですよ、練習して、それらしくさえしてもらえばいいんじゃないかなぁ。
ダメですかね。
というわけで、映画を観た方は読んでも映画のイメージになってしまうと思うので、映画を観てない方が映画を観る前に読むべしです。
史実にもある、例のアレに至る三成の心境とか、アレそのものの様子も想像できて、まさに歴史浪漫感満載な作品です。
ぜひ読んでみてください。
歴史には浪漫がある。
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