戦国の戦乱と自然の脅威に屈しない!東北の小国相馬を守るために奔走した英雄相馬義胤と復興に向けた領民の強さに心を打たれずにはいられない「奥州戦国に相馬奔る」

近衛龍春

こんにちは。
一か月ぶりくらいの投稿になりました。

延長に延長を重ねた緊急事態宣言が、オリンピック開催事情に合わせたと言われている解除をしました。
飲食店のアルコール提供が19時まで許可されたとのことなのですが、19時かぁ…。
とはいえ、まだまだ感染者が多いようなので、そう簡単にアルコール提供の許可も出せないのでしょうねぇ。
政府の苦慮が伺えます。

東京オリンピックの開催もいよいよあと一か月を切りましたが、せっかく東京で開催されるというのに、従来のオリンピック開催が近づくワクワクムードは一切なく、もう生きているうちに地元開催などないのだろうと思うのに、こんなに盛り上がらないオリンピックにあたってしまうというのは、もうなんというか…。選手たちが気の毒で仕方ありません。

一方、ワクチン接種が思ったよりも早くできそうな気配が出てきたことは喜ばしいこと。
東京は、6月21日から若者から優先でワクチン接種の案内が届き始めまして、管理人の息子のところにも届きました。いいなぁ。
管理人と管理人の奥さんにはまだ届きません…。
ただ、そう遠くない未来に届きそうな気はしてきているので、あともう少し辛抱したいと思います。
早くワクチン接種したいなぁ。

さて、そんな中、今回読了したのは、超久しぶりの近衛龍春先生の作品で「奥州戦国に相馬奔る」です。
「奔る」と書いて「はしる」です。

いやぁ、相当久しぶりの近衛龍春先生の作品でして、管理人が歴史小説・時代小説を読み始めた最初の頃に読んだ「天下無双の傾奇者 前田慶次郎」と「直江兼続と妻お船」以来となります。
しかし、昔の自分のレビューが酷すぎて泣きそうなレベル…。
いつか作品を読み直してレビューを書き直そうと思います。

近衛龍春先生については、「直江兼続と妻お船」が管理人がこれまでに読んだ歴史小説・時代小説の中でも屈指の良作だったので、それ以降も気にはしていたんですが、なかなか読む機会に至らず、しかし、今回、書店で本作を見つけまして「おお、震災のあった東北にフォーカスした作品か。相馬氏に関しての知見も全くないし読んでみよう。」という思いに駆られ読んでみました。

結果ですが、面白かったです。
が、管理人としてはちょっとだけ残念なところがある、という感じでして、その残念なところについては後述します。
この記事の一番お尻にあるいつも入れてる★評価で「管理人満足度」が 3.5 になってますが、本当は 4 にしてもよいくらい。
そこを 3.5 にしたところがそこになります。

まず先に、本作の内容について触れます。

管理人、本作を読む、いや、正確には本書を書店で見かけるまで「相馬氏」という存在を知りませんでした。
実際、本作品を読んでその所領の範囲の小ささを見るに、なかなか表舞台には出てこないだろうなぁというのは納得でして、しかし、その小国 相馬についての知見を得ることができて、非常によかったと思っています。

本作は、戦国の時代に、現在の福島県相馬市あたりを所領としていた陸奥相馬氏の第14代当主 相馬義胤(よしたね)の活躍を描いた作品です。

東日本(関東甲信越・東北地方)諸大名配置図(勢力図)を見ていただくと、その小ささがわかるかと思います。
北を伊達政宗が、西を蒲生氏郷(がもううじさと)が、南は岩城貞隆(いわきさだたか)を挟んで佐竹善宜(さたけよしのぶ)が、という状態で、非常に難しい位置にあったと思います。

この相馬を、小国ながら他大名からの侵略と、我々の記憶にも新しい震災という困難から、なんとか存続させていく相馬義胤と、その相馬氏とともに苦難を乗り越えていく家臣、領民の姿に心を打たれる作品でした。

まずは、やはり、その位置的な問題と規模の小さから、どうしても侵略の対象として伊達政宗には睨まれ続けたのでしょう。
本作でも、伊達政宗と相馬義胤の鍔迫り合いは終始つきまとう問題で、本当に伊達政宗は鬱陶しかった。
管理人は、まだ伊達政宗についての作品を読んだことがないのですが、今の時点では、伊達政宗嫌いですね。
義胤の邪魔しすぎ。しかも、お調子者でなんか二枚舌感が凄すぎ。
秀吉に成敗されればよかったくらい思ってます。(伊達政宗の作品を読んだら変わりそうですが)

この伊達政宗との鍔迫り合いの後ろ盾になってくれたのが佐竹善宜なんですが、とはいえ、佐竹善宜も最終的には自分の所領が大事なわけなので、相馬領を完全に守ってくれるかというとそんなわけにはいかずなんとも頼りない。
なので、義胤も「やっぱ、自分のところは自分達でどうにかするしかねぇし」みたいなことで頑張らざるをえなくなるという。それはそうなんですが、なんだかなぁ、という感じ。

本作の前半は、ずっと、この伊達政宗との争いが描かれます。

伊達政宗との駆け引きをやっている間も、うっすらと当時の日本の中心である関西方面の出来事は描かれるんですが、とにかく相馬は小さいので全国規模の出来事の表舞台に出るようなことがなく、そういったものとはあまり関わりがないかのような気配で話が進みます。

しかし、本作の3分の1くらいのところで、豊臣秀吉の小田原征伐に差し掛かってくると、そこから一挙に表舞台との関わりが出てきます。

豊臣秀吉が北条氏を討つための小田原征伐によって、当時の日本のホットな地域が、関西から関東に移ることで、関東を含む東日本の情勢が動き始めるんですね。
義胤にちょっかいを出し続けていた伊達政宗も、豊臣秀吉の上洛要請に従わず敵として見られていたことで、あの小田原での茶番に至るわけですが、そんなこんなで、ぶっちゃけ相馬氏云々どころではなくなったのかもしれません。

ここで、実は石田三成とは関係を持っていた義胤は、好機だったにも関わらず失策をしてしまい、義胤は義胤で伊達政宗云々どころではなくなり、今度は義胤が秀吉に対してどうするか、みたいなことで奔走することになります。
まさに作品タイトルの奔る(はしる)ですね。

そこからは、豊臣政権~徳川政権に至るまで、小国ながら、あれこれと豊臣家・徳川家と関わることになり、これが最後までずっと続くので、まさに義胤は相馬家存続のために奔走しまくることになります。

そして、これらと並行して、本作というか相馬家存続に対してポイントとなるのが、相馬にとって大打撃となる大震災の悲劇です。

2011年の東北大震災を彷彿とさせる大地震がこの時期にも二回(会津地震を含めると三回)発生していて、徳川政権となった後半は、戦(いくさ)による脅威ではなく、この自然との戦いに奔走する義胤とその家臣、そして領民たちの姿が描かれます。
因みに、二回の震災は、1611年の慶長三陸地震と1616年の宮城県沖地震です。

ここでの震災の様子は、2011年の東北大震災の記憶とともに読むことになり、なんとも胸が苦しくなりました。
過去にも同じ規模の震災は発生していたんですね…。
しかし、復興に向けて前を向いていく義胤や家臣、領民の姿がなんとも力強く、心が洗われるようでした。

ということで、本作は、戦国時代特有の大名間のいざこざと、震災からの復興に奔走する、相馬義胤と相馬家、家臣、領民の姿を描いた作品です。

途中、主役が義胤から嫡男の利胤(蜜胤、三胤)に代わるのか?と思える時があるのですが、結局、終始、義胤が主役になります。
ご存知の方はご存知かと。

さて、冒頭にお伝えした通り、管理人は本作を読むまで相馬氏についての知見が一切ありませんでした。
本作を読むことで多少の知見が得られたわけですが、義胤はすごかったですね。
相馬を大きくすることはできませんでしたが、周りを大きな大名に囲まれた中で相馬家存続のためによく耐え、かつ、あの大震災からも復興させた手腕はもっと評価されてしかるべきなんじゃないですかね。
管理人が知らないだけかもしれないですが。

それと、東北というのは、震災による大被害というのが、過去にも何度か発生しているのですね。
近衛龍春先生は、2011年の震災で被害を受けた東北の方たちへのエールを込めて本作を書かれたのかもしれませんが、本作で描かれるその部分の描写は、まさに映像で見る2011年の震災の様子のそれと被るようで、読んでいて胸が苦しくなりました。
被害にあわれた方が読む場合は注意が必要かもしれません。

一方で、そこから復興を果たしていく相馬の逞しい姿も描かれるので、そういったポジティブな方向で読んでいただけることを願います。
そういった点で、デリケートなところを含むなと思いながら、それらも含めて東北に興味を持ってもらうということで、本作はややチャレンジングなところがあるかも、と思いながら、管理人は見事に東北に興味を持つことができたので、もし近衛龍春先生にその目論見があるとしたら、管理人に対しては大成功です。

最後に、冒頭にお伝えした「管理人としてはちょっとだけ残念なこと」です。

これですね、恐らく、かつて「天下無双の傾奇者 前田慶次郎」でも感じたことなんだと思うんですが、資料などで得られた情報なんだと思うのですが、情報が細かすぎる部分が多い、という点です。

もう少し説明すると、これは、恐らく、近衛龍春先生の知識や勉強量が凄すぎるからなんだと思うんですが、人物に関する情報や、戦時の各武将の抱えた兵数等が非常に細かく書かれてまして、史料としてはいいと思うんですけど、小説として読んでいる分には細かすぎて、正直、読むことをやめてしまいそうになるレベルなんです。少なくとも管理人はそうでした。

特に前半の伊達政宗とのやり取りの部分は、伊達家、相馬家、佐竹家に関する知見がなく、かつ、土地勘もなく、かつ、当時の東北事情をあまり知らない管理人としては、次々に登場する人物の細かい出自の話や、他人物との相関関係の説明であったり、そこでの戦の際に誰に何人の兵がつき、誰に何人の兵がつき…ということが書かれていても、正直、全然頭に入ってこず、もう少し大局的な話にならないかな、と思ってました。
ぶっちゃけ、その部分の時点では「これ最後まで読み切れるだろうか」と思っていた次第。

そうこうしていたら、豊臣秀吉や石田三成らが登場し始めるあたりで一気に面白くなり、最終的には面白かったのですが、そこまでのくだりはつらかった。
これが「管理人満足度」を、3.5 とした理由です。
実際、読み終えた時の満足感は、4~4.5 くらいだったんですが、前半部のそれをどうしても評価に反映させたく、最終的には 3.5 としました。

管理人思うに、近衛龍春先生はものすごい知識量と調査量なんだと思うのです。
なので、作品の中で書かれた出来事の確からしさ(このブログで言うところのノンフィクション度)は高いのだと思うのです。
それを、余すことなく作品に盛り込んでくるんだと思っていて、これは好みの問題になると思うのですが、それを好む方にとっては、とても評価の高い作品なのではないかと。
ですが、管理人としては、小説には歴史教科書的なそれよりも、物語としてのそれに重きを置いているっぽく、本作(と恐らく「天下無双の傾奇者 前田慶次郎」でも)では、前半部でそれを非常に感じました。

なので、重ねて言いますが、このブログでの「管理人満足度」が 3.5 であることについては、そのあたりを加味していただいて「細かい情報大いに結構」という方は、もっと加点した評価と思っていただいてよいかと思います。

ということで、また、今回も愚にもつかないレビューとなりましたが、戦国時代の武将というと伊達政宗がとりあげられることの多い東北にあって、その政宗がついに攻略できなかった隣国 相馬の当主 相馬義胤の活躍を描いた本作、是非、読んでみてください。
ちょっと最後に余計なことを書いてしまいましたが、面白い作品ですよ。

歴史には浪漫がある。

ノンフィクション度
3.5
奇想天外度
0
サムライ度
4.5
忍者度
0
エロ度
0
管理人満足度
3.5

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