「のぼうの城」「忍びの国」に続いて和田竜さんが発表した作品で、これまでのところ和田竜さん作品の中で唯一の完全架空の物語。史実にあることでもないし、登場人物も全て架空だそう。
賛否両論分かれるところかと思うんですが、個人的には全て架空ってところでちょっと☆を減らしてしまう気持ちがあるのは否めません。話はすごく面白いんですけどねぇ…。
あ、タイトルですが「こたろうのひだりうで」と読むんでいいんですよね?「さわん」じゃないですよね?偉い人教えていただけると助かります。
時代設定は、冒頭に1556年とありまして、1560年が桶狭間の戦い(織田信長が今川義元を破った戦い)ですから、それのちょっと前ということになります。
場所はちょっとわかりません。というか架空の場所なんでしょうね。
碧山城(みどりやまじょう)や擂鉢原(すりばちはら)という名称が出てきますが、どれも実在はしない場所だと思ってます。(和田竜さんのことなので、架空の話にする以上、そういったところもとことん実在しないものに拘ってんじゃないですかね)
戸沢家と児玉家の争いを元に、戸沢家の武将 林半右衛門(はやしはんえもん)と、児玉家の武将 花房喜兵衛(はなぶさきへえ)のサムライ魂のぶつかり合いと、戸沢家の次期当主 戸沢図書(とざわずしょ)と林半右衛門の確執、超絶鉄砲使いっ子の小太郎の活躍を描いた作品なんですが、これ、全部、架空の人物なんです。
戸沢家も児玉家も、まあ、同じ名前の家は存在するんでしょうが、特に実際のどれをモデルにしたともなく、林半右衛門も花房喜兵衛も同様です。もちろん、戸沢図書や小太郎も。
もう少しキャラクターについて説明すると、林半右衛門と花房喜兵衛はとにかく絵に描いたようなサムライ魂満載の武将で、戦(いくさ)の際にも、出会いを楽しむようなやりとりを見せて清々しいほどの武者ぶりをみせます。
それに対して、林半右衛門が仕える戸沢家の次期当主 戸沢図書は、優れた武将でありたいという姿勢から、林半右衛門に対してやたらとできるんだというところを見せたがるものの、林半右衛門のそれに比べて劣るために、やらかして林半右衛門に助けられてんのに、偉そうにするイケ好かないやつです。
小太郎は、11歳なのに180cmくらいの身長で、最初友だちにいじめられてる気弱な子ども風なのに、実は神の左腕を持っていて、それはもうコブラのサイコガンみたいな神っぷりを見せます。(いや、コブラみたいに左腕が外れたりはしないですよ勿論。コブラもサイコガンも古っ!)
ちょっともうこれ以上になるとネタバレになるので、内容やキャラクターについてはこのくらいにしますが、この作品はどうなんでしょうね、「のぼうの城」でサムライの姿を描き、「忍びの国」で忍びの姿を描いたら、和田竜さんが両方を描きたくなったとかあるんですかね?
キャラ紹介してませんが、後半には萬翠(ばんすい)という伊賀忍者が登場してきて、これがまただいぶ存在感を出してくるので、忍者感も結構あります。最後に決定的な余計な仕事をしてくれやがりますし。
そこに超絶鉄砲使いの小太郎の神の左腕を追加してくるので、改めて考えるとこの作品はだいぶ盛りだくさん。
後半は怒涛のクライマックスを見せまして、ぶっちゃけクライマックスが三回くらいあります。
小太郎の友達の玄太のアレと、図書のアレと、半右衛門のアレです。ああ、言えない…。
(アレアレ言って申し訳ないですが、そこは読んでみていただきたい)
管理人は、実はその前の半右衛門が小太郎を戦(いくさ)に駆り出すことを決める場面の印象も強くてですね…。
この作品は架空の話ですが、実際の戦(いくさ)では本当にあったことらしいですよアレ。
相当ヤバいですよね。それは半右衛門もやるしかないと思うわけですよ。
ということで、物語としては非常に読み応えがあるんですが、とにかく残念なのが全て架空の話であること。
基本的に、ある程度史実に則したものを期待している管理人はそれを知らずに読んだので、読了後にそれを知って「う~ん」でした。
が、そこは、この際、気にせず読みましょう(笑)。
読まないとわかんないですからね。
これも映画化されるのかなぁ…。
タイトルからはちょっと想像がつかない、非常によくできた儚くせつない漢(おとこ)達の物語です。
泣きましょう。
歴史には浪漫がある。
ノンフィクション度 | |
奇想天外度 | |
サムライ度 | |
忍者度 | |
エロ度 | |
管理人満足度 |