山田風太郎の忍法帖シリーズの一つ。
エログロ少な目で、史実もそこそこ絡めてあって、管理人的には評価しているのだが、何故か世の中的にはたいして評価されていないっぽい謎の作品。
なんでだろう?
武田信玄は死ぬときに嫡男勝頼に「儂が死んでも三年は死んだことを黙っておけ」と指示し、それを勝頼は守るんですが、家康が「信玄ってホント生きてんの?死んでんじゃね?」と怪しんで伊賀忍者に探らせる、というのが始まり。
家康が放った9人の伊賀忍者に対して、武田方が対抗するのが、まさかのあの人と真田昌幸(さなだまさゆき)。
まさかのあの人というのは、記録では川中島で討死したとか諸説あるらしいですが、その存在すら「本当にいたのかね?」って話もある信玄に仕えた名軍師とされるあの人。
あの人が実は生きてた、っていうことにして、信玄の遺言を守ろうとする勝頼をフォローします。
(でも、実際に存在そのものが確かでないらしいので、なくもないんじゃないかと思わせるのが山田風太郎作品のよいところ)
そして、もう一人が、有名な真田幸村(源二郎信繁)のお父さん真田昌幸です。
2016年のNHK大河ドラマ「真田丸」の草刈正雄さんです。
なので、ちょっぴりですが、幸村とお兄ちゃん源三郎信之(兄が源三郎で、弟が源二郎の謎、わかる方教えていただけると嬉しいです)も出ます。子供ですけど。
その昌幸父さんが使うのが、猿飛天兵衛(さるとびてんべえ)と霧隠地兵衛(きりがくれちへえ)という二人の真田忍者。
真田十勇士の猿飛佐助と霧隠才蔵をもじったような忍びを軽くぶっこんでくるあたりが、個人的にはよかったりします。
霧隠才蔵は完全に架空の人らしく、猿飛佐助は元になった人がいたとかいないとか。
これらの人達が、実際に存在したと言われる数人の信玄の影武者を擁して信玄の死を隠そうとするのを、徳川伊賀忍者が暴こうとするというのが大まかな内容です。
どうですかね?ダメですかね?
内容がフィクションなのは間違いないですが、登場人物やイベント等、外枠は記録上あったとされることをベースにしてて、「そんなこともあったかもしれないよ」と思わせてくれる歴史浪漫感があって、個人的にはよいと思うんですけどねぇ。
話のベースが「信玄の死の秘匿」なので、忍者対決的な描写は他の忍法帖シリーズに比べるとやや薄めかなぁとは思いますが、その分、政治的な駆け引きがあったりでそれはそれで面白いんじゃないかなぁと思います。
山田風太郎作品にしては、エログロ少な目で読みやすい作品だと思うので、興味が湧いた方は是非。
歴史には浪漫がある。
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