山田風太郎の忍法帖シリーズの一つ。
忍法帖シリーズ後期の作品。
1565年に将軍 足利義輝が三好義継らに殺害される永禄の変を、松永弾正の策略によるものという形で絡ませて展開される話。
松永弾正が、足利義輝の奥さん 夕子の方(ゆうこのかた)をどうにかできないものかと考え、悪い事を考える話なんですが、これどこかで見た展開だなと思ったら、ちょっと違うけど、伊賀忍法帖でも松永弾正が同じようなことしてたことを思い出して草。
ほんと、ダメな人だねぇ松永弾正。
今回も根来衆(ねごろしゅう)に悪いことさせて、夕子の方をどうにかしようとするのだけれど、まあまた上手くいかないわけです。
で、この作品は、松永弾正の命令で悪さをする根来衆に対する正義の味方が、残念ながら忍者ではないので、忍者vs忍者の構図にならないタイプの作品。
しかも、読み進めながら「この作品、誰が主人公なんだろう?」と思うことしばし。
最初から出てくる美少年厨子丸(ずしまる)は、どう見ても忍者でないしサムライでもないから、主人公臭は少しするんだけど、主人公になり得ないだろうと思うんだけれども、なるほど、後半、主人公になります。
山田風太郎作品によくあるせつないパターンで立ち上がることになるんですが…。
どういう形で主人公、つまり、厨子丸は根来衆と戦えるようになるかは読んで確認してみてください。
なんていうかなぁ、この作品「忍法帖」ってついているので、それなりに忍法が炸裂するのかと思って読んだんですが、そうでもないので、そのあたりが微妙なんですよねぇ。
ただ、そのタイプ、案外多い(笑)。これもそのタイプでした。
でも、話としては面白く、最後のクライマックスあたりは、管理人、一気読みでした。
この作品、大阪の堺を舞台にすることが多く、管理人としては、当時の堺の立ち位置みたいなものがよくわかって、その部分は勉強になりました。
なんというか、今のバチカンのような感じで、アンタッチャブルな都市だったんですね、堺というのは。
何故そういう立場を築けたのかが管理人は勉強不足でわかっていないのですが、時代小説では堺が出てくることが多いので、堺がどういうものかが少しわかってよかったです。
あとは、このくらいの時期から、戦(いくさ)の仕方がアレになっていくんだなぁ、というのも感じられます。ちょっとネタバレになるのでアレは言えないですが。
これ、この作品のキモなんじゃないですかね。
でも、忍法がねぇ…、ちょっとスーパーじゃなくなっていくのだよなぁ、そのあたりがなぁ…。
ということで、忍者感は他の忍法帖モノに比べると低いので、その手のモノを期待する方は他を先に読んでもらってからでいいかなぁと思いますが、そうでない方は結構楽しめるのではないかと思うのでそういう方は読んでみてください。
管理人は、忍者感を期待して読み始めてしまったので、ちょっとアレでした(笑)。
歴史には浪漫がある。
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