想像すると吐き気がするくらい隊律が厳しすぎてやっぱり好きになれないんだけれども読み始めると何故か夢中になってしまう「新選組血風録」

司馬遼太郎

こんにちは。

オリンピックが開幕しました。
なんだかんだで始まってしまったら、毎日、日本選手の応援で大変です。
メダルもたくさん獲れていて、日本の選手たち、本当にすごいなぁと感心しきりです。
残念ながらメダルに届かなかった選手たちもよく頑張ってますね、その健闘ぶりには目頭が熱くなります。
まだまだ競技が続きますので、引き続き応援したいと思います。

その一方で、コロナの感染者数が爆発的に増えてまして、いよいよ、東京以外の地域でも緊急事態宣言が再発動されるようです。
これでも、ワクチン接種の効果は出ているらしく、ワクチン接種ができていなかったらどうなっていたんでしょうねぇ…。
警戒心が明らかに下がってきているのでしょうね。
重篤になる・ならないでなく、医療従事者の方達の苦労も考えて、まだまだ各自での注意を怠らないでもらいたいものです。
管理人、やっと一回目のワクチン接種の予約ができましたが、8月下旬と遅いのですよねぇ。
ただ、もう少しの辛抱だと思うので、注意を怠らないようにしようと思います。

さて、そんな状況の中、一冊読了しました。

久しぶりの幕末モノとなりまして、しかも、若干「この期に及んで?」感があるものの、オススメ歴史小説・時代小説として、わりと挙げられるので、押さえておかないといけないなということで、今回は司馬遼太郎先生の「新選組血風録」です。

面白かった!

管理人、新選組に関してはわりと知見があるつもりでしたが、よく考えたら、元SMAPの香取慎吾くんが新選組局長 近藤勇を演じたNHK大河ドラマ「新選組!」と、新選組副長 土方歳三が主人公の司馬遼太郎先生作品「燃えよ剣」、管理人が最も好きな隊士 吉村貫一郎を描いた浅田次郎先生作品「壬生義士伝」くらいしか見ていないので、全然たいしたことがありませんでした。

そこで、今回の「新選組血風録」です。
が、実は本作を手に取るにあたっては、若干、躊躇がありまして、理由は本作が「短編集風になっていること」でした。

管理人、読んだあとに物足りなさがあるといけないので、ある程度、ページ数にボリュームのあるものを好む傾向がありまして、短編集やオムニバス形式作品は、やや敬遠しがちなところがあります。
実際、これまでの読了作品で、短編集は一つもなく、オムニバス形式の作品も、読み始めてみたらオムニバス形式だった、というものばかりなんです。

とはいえ、実は過去に読んだオムニバス形式の作品(オムニバス風も含む)は、木下昌輝先生の「宇喜多の捨て嫁」、浅田次郎先生の「壬生義士伝」、谷津矢車先生の「曽呂利 秀吉を手玉に取った男」、永井路子先生の「円環」、蓑輪諒先生の「くせものの譜」と、いずれも、読了後の満足度が非常に高いものばかりで、最近は「オムニバス形式も悪くない」と思うようになってはいるんです。

なぜかというと、それらは全て、オムニバスで語られた各話が実は繋がりを持っていて、最終話でそれらが昇華される(今風にいうと、フラグが回収される?)という形をとっているので、推理小説のようなトリック感が味わえるからです。

しかし、本作「新選組血風録」は、目次を見る限り、どうもそのようには見えず、各話で1~数名の隊士にスポットを当てて、その隊士のエピソードを語っていくだけのものじゃないか、という気配が満載。

果たして結果はどうだったかというと、そのまま予想通りでした(笑)。

なので、本作は、全15章あるんですが、全15話の短編集と思ってもらってよいと思います。
しかも、その15話は、予想した通り、各話で1~数名の隊士にスポットを当てていくので、読んでいく順番と、作中の時の流れが完全に時系列で並んでいるわけではないので、前半ですでに死んでる人物がまだ存命の際のエピソードが後半に語られたりということが平気であります。(まあ、ある程度、時系列を意識した感じにはなっているのですが)

ということで、ズバリ、本作は、多少、新選組についての知見がある方が、さらに追加で知見を得るのによいのかなと管理人は思います。
全くの新選組初心者の方が読むにはあまりオススメではなく、そういった方は、本作の前に、同じ司馬遼太郎先生の「燃えよ剣」あたりを読了していただいて、新選組のおこないのあらましをある程度理解したうえで、プラスアルファする役目として本作を読むのがよいんじゃないかなと思います。

では、次に、各話がどんな感じかというところですが、人物もエピソードも、てんでバラバラなので、今回初めてになりますが、各話の主人公が誰で、何のエピソードが語られるのかを以下に列挙してみようと思います。

これ、ネタバレではないつもりでして、管理人の勝手な想像ですけど、これから本作を読もうと思っている方が気にするのは「誰の話があるの?」「どんなエピソードがあるの?」になるんじゃないかと思ってまして、それをここではお伝えしようかと。

そうすれば「おー、あの隊士の話があるのか」であったり、管理人のように「知らない隊士の話が多くていいぞ」という感じで参考になるのではないかと思ってます。
ということでいってみましょう。

「油小路の決闘」
 主人公は、篠原泰之進(しのはらたいのしん)。
 伊東甲子太郎(いとうかしたろう)の新選組入隊から彼らに暗殺されるまでの話。
 ここで語られる篠原泰之進の癖は、司馬遼太郎先生の創作だとか。

「芹沢鴨の暗殺」
 主人公は、土方歳三。
 芹沢鴨の狼藉っぷりと彼らに暗殺されるまでの話。
 これは、他でもよく語られる話ですね。

「長州の間者」
 主人公は、深町新作(ふかまちしんさく)。
 長州の間者(かんじゃ)として新選組に入隊した深町新作と、実はもう一人いた間者の話。
 深町新作って本当にいた隊士なのかな?
 実際、間者の入隊も多かったらしいです。

「池田屋異聞」
 主人公は、山崎烝(やまざきすすむ)。
 山崎烝と敵方の大高忠兵衛との宿命的な関係を絡めた有名な池田屋事件の話。
 本作「新選組血風録」で、山崎烝という隊士の凄さがわかりました。

「鴨川銭取橋」
 「かもがわぜにとりばし」と読むようです。
 主人公は、武田観柳斎(たけだかんりゅうさい)…のような、山崎烝のような…。
 武田観柳斎が鴨川銭取橋で、あの隊士に誅殺されるまでの話。
 NHK大河ドラマで八嶋智人さんが演じた印象が強すぎて、もうあの感じが拭えない…。

「虎徹」
 主人公は、新選組局長 近藤勇。
 近藤勇の愛刀虎徹に関するエピソード。
 この話の真偽はわからないですが、近藤勇の人となりを知れるようなお話。

「前髪の惣三郎」
 主人公は、加納惣三郎(かのうそうざぶろう)。
 田代彪蔵(たしろひょうぞう)らとの衆道(しゅどう)の話。
 昔は普通なうえに、武士には嗜みくらいのものだったとも聞きます、衆道。
 加納惣三郎も田代彪蔵も創作上の人物なんですかね、よくわかりません。
 管理人はノンケなのであまり歓迎しない話ですが、途中で度々発生する山崎烝の狼狽ぶりには声を出して笑えました。

「胡沙笛を吹く武士」
 「こさぶえ」と読むそうです。
 主人公は、鹿内薫(しかないかおる)。
 奥州南部領出身ということだったので、管理人イチオシの「吉村貫一郎か!?」と思いましたが違いました。
 但し、人となりは、吉村貫一郎に似た感じで「南部の人というのはこういう感じなのかなぁ」と思わざるを得ない。
 真面目な隊士が、新選組入隊後に家庭を持ってしまうのですが…。
 こういうところが、管理人、あまり新選組を支持しないところなのですよねぇ…。

「三条磧(かわら)乱刃」
 主人公は、井上源三郎と国枝大二郎(くにえだだいじろう)。
 新選組の中でも年長の井上源三郎の人柄を語るエピソード。
 腕の立つ剣客ばかりの新選組にあって、その点でそうでもない井上源三郎がなぜ隊長に任命されていたかがわかるお話。

「海仙寺党異聞」
 主人公は、中倉主膳(なかくらしゅぜん)と長坂小十郎(ながさかこじゅうろう)。
 のちに医者になったという長坂小十郎と、その長坂小十郎を誘った同郷の中倉主膳の話。
 隊内の評判が相反する二人の、それぞれの結末が興味深い。

「沖田総司の恋」
 主人公は、沖田総司。
 池田屋事件以降の話なので病状が悪くなっている頃のお話。
 もうタイトルそのまま。
 そっとしておけばよいものを、ある方が余計なことをしてしまうばっかりに…。

「槍は宝蔵院流」
 主人公は、谷三十郎(たにさんじゅうろう)…かと思わせといて斎藤一(さいとうはじめ)では?
 槍の名手 谷三十郎にまつわるお話ですが、谷三十郎が残念な話でもあります。
 実際の谷三十郎は槍の名手ではなく、普通に強い剣客だったとか。

「弥兵衛奮迅」
 主人公は、富山弥兵衛(とみやまやへえ)。
 新選組には珍しい薩摩藩の脱藩浪士のお話。
 とはいえ、となると、まあ、そういう人物ということです。

「四斤山砲」
 「しきんさんぽう」と読みます。
 主人公は、大林兵庫(おおばやしひょうご)と阿部十郎(あべじゅうろう)。
 大林兵庫は、長倉新八(ながくらしんぱち)に関わりのある人物として登場するんですが…。
 刀槍を使った白兵戦のイメージが強い新選組にあって、珍しい大砲担当のお話。
 新選組も大砲を持っていたんですねぇ、まあ、持ってるか。

「菊一文字」
 主人公は、沖田総司。
 沖田総司が持ったと言われる愛刀 菊一文字則宗(のりむね)にまつわるエピソード。
 この菊一文字則宗は、どこかの神社にあるそうで、行方は知れないとか。
 この話も真偽のほどが不明です。

以上、全15話はこんな感じです。
お目当ての隊士の話はありますかね。
管理人は、「壬生義士伝」の吉村貫一郎の登場を期待して読んでいましたが、結局、主人公としての登場はなく、いくつかのお話でちらっと登場するに留まりました。
まあ、それもよしです。

管理人の知らない隊士の話や、知っているエピソードも他作品とは違う視点で描かれているので、面白く、どんどん次の話が読みたくなってしまうという状態で、600ページ超の作品でしたが、読むのが遅い管理人が二週間くらいで読了してるくらい夢中になって読んでしまいました。

ということで、そろそろ、この愚にもつかないレビューを終わりにしたいと思いますが、恒例の映像化に関するお話はというと、やるとしたら映画は厳しく、連続ドラマかなぁと思ったら、過去に連続ドラマで三回映像化されていたようです。(1965年、1998年、2011年)

上記で示した通り、各話が完全に独立してますからねぇ。
映画にしたら、もう「新選組血風録」というタイトルの違う中身のものにならざるを得ないでしょう。
となると、連続ドラマになるわけで、まあ、ドラマ化したのも同じような考えだったんじゃないでしょうか。

見てみたいのは、1998年版ですかねぇ。
でも、各話のタイトルを見ると、原作を踏襲してるとは言い難く「別作品じゃね?」感が…。
そういう意味では、2011年版が、わりと原作を踏襲していそうではあるのですが…。

まあ、あれかなぁ、新選組は、NHK大河ドラマの「新選組!」が管理人としては一番よさそうなので、あのイメージで基本的にはよいと思ってます。
映像は、NHK大河ドラマの「新選組!」を見てください(笑)。
もう一回、全話、見直したいなぁ。今度、見直そうかなぁ。

ということで、今度こそ本当に終わりにしましょう。
激動の幕末を苛烈に生きた新選組の知見を増やす作品としてオススメの本作「新選組血風録」、是非読んでみてください。
司馬遼太郎先生ですし、間違いはないですよ。
面白いです。

 

歴史には浪漫がある。

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