何の気なしに使っている暦(こよみ)の作成にドラマあり。初の日本純正暦法の作成に奔走する渋川春海とそれを支える偉大なる先人達の改暦への情熱に目頭が熱くならないわけにはいかない「天地明察」

冲方丁

こんにちは。

コロナが終息しませんね…。
管理人のテレワークも、開始から約一ケ月が経過しようとしています。
やんわりとゴールデンウィークに入った気配ですが、STAY HOMEですから外出は控えているのと、良くも悪くも仕事量が全然変わっていないので、自宅でバリバリ仕事してしまっている管理人です。
自宅で仕事していても、相変わらず仕事を終える時刻が日を跨いでいる感じなので、奥さんからは「バカじゃないの」と言われています。深夜に夕食をとるのはきっとよくないと思うのでこの機会に直したいなぁと思っている次第。
早くコロナ終息して欲しいものです。

さて、通勤中が最も読書していたのに、通勤というものがなくなって、一時、読書のペースが鈍っていた管理人ですが、自宅で仕事をするようになって、そのままだと、単純に仕事時間が長くなってしまって集中力が続かないことに気づき、読書やらギターで気を紛らわせ始めたことで読書のペースが戻りつつあります。
そして、仕事中にちょっと休憩で本を読み始めたら面白くて仕事を滞らせるという事態が若干発生しているのは内緒です。

そんな管理人が今回読了したのが、2010年の第7回本屋大賞他、数々の賞をとった冲方丁(うぶかたとう)さんの「天地明察」です。
こういう漢字で「うぶかたとう」と読むのかぁと感心しつつ、すごい名前だなぁと思っていたらどうやらペンネームの様子。なるほどなぁと思いつつ、ペンネームとして「うぶかたとう」って思いつくのも凄いなぁと感心しております。

この作品は「おすすめ時代小説・歴史小説」なんてのがあると、必ず上位に入ってくる作品なので、管理人、もうずっと気になっていたものの、なかなか手を出さずにいたんですが、いよいよ読む気になりまして、そもそも、何故、手を出さずにいたかというと、単純に「戦国時代、幕末系じゃないから」「戦(いくさ)とかなさそう」「改暦にモチベーションが上がる気がしないなぁ」というニワカ感満載な理由。
それが、このところの「戦国・幕末以外」に興味を持ち始めた心持ちと、上下巻合わせても600ページいかないくらいのボリューム感というところが相まって、ちょっと読んでみるかな、という気持ちになりました。

で、結果ですが「面白くないわけがない(つまり面白かった)」です。
そりゃそうですよねぇ、本屋大賞をとるような作品で面白くないわけがない。
前回投稿した「天地人」の読了から二週間かからず上下巻を読み終えました。

この作品、管理人は前情報がほとんどなく、書籍の裏表紙に書かれた煽り解説を読んだくらいで、映画化されている(2012年にV6の岡田准一くん主演。これで宮崎あおいさんと共演してああなったわけですね。)ことも知りませんでした。
なので、この内容ってそもそも史実なのかなんなのかもわからず、そのあたりも敬遠していた理由の一つですね、そういえば。
結果、読んでみたら、バリバリの史実で、これがモチベーションが上がった要因の一つ。
当然、デフォルメされたところ多数なのだと思いますが、大枠は史実に基づいていそうなのと、登場人物もおおよそ実在の人物、のはず。
読み始めた時にはそのあたりがわかっておらず「これどの程度史実なんだろうか?」と思って読んでいたのですが、割とすぐに「あれ!?これマジのやつじゃね?」ってなりました。

ネタバレしない程度にレビューすると、まず、予想通り、戦(いくさ)とかないうえに、切った張ったのやりとりは一切ないので、その手の作品を読みたいという方はとりあえず避けておいてよいと思います。ただ、それを押して余りある面白さがあるので、少しでも興味があれば読んで損はないです。

内容ですが、貞享(じょうきょう)元年(1684年)に歴史的な改暦(かいれき)を実現する渋川春海(しぶかわはるみ)の改暦実現までの紆余曲折を描いています。
なので、作品の雰囲気は、現代でいうところの「下町ロケット」とか「まんぷく」(の萬平さん的な)の感じと言ったらいいのかなぁ。
ただ、春海の雰囲気が「情熱は内に秘める」感じなので、ぐわーっと盛り上がるというよりは、静かに盛り上がるのと、キャラ的にちょっとダメな感じがあるので、ちょっとのんびりとした感じもあるかなと思います。

改暦というのは、管理人は本書を知るまで知らなかったんですが、カレンダーというか、読んで字のごとし「暦(こよみ)の見直し(変更)」ということですかね。
例えば一年を365日にして、それを12の月で割って、ひと月を28日~31日にして、というものを見直す(変える)ということですね。
今はもうしっかりと決まってますが(と思ってますが)、これが過去にはいろいろな法則によってちょこちょこと変わっていたみたいでして、最終的には、地球の自転とか公転とか、太陽と月とか、いろいろ絡んで、そして「計算」されて出来上がってんですが、今となっては常識となっていること(地動説とか天動説とか)が昔はそうではないものだから、今とは結構違っていたようです。(一年が365日でないとか、毎月の日数違いとか)

で、違う(ズレている)と何が起こるかというと、農耕とか行事に支障があった、らしい。
でもどうなんですかね?まあなんとなく「ちょっと困るかなぁ」という気はするけども、日本中の人が一律ズレていれば、正直、そこまで困るのかあんまりわかってないんですが、まあ、日が経過するにつれ、そのズレが大きくなるような状態だったようなので、そのままってわけにはいかなかったんでしょうね。

時代的には、徳川4代目将軍 家綱(在職1651年~1680年)と徳川5代目将軍 綱吉(在職1680年~1709年)をまたぐ感じで、もう、そこそこ太平(たいへい)な頃なんじゃないかと。
明暦3年(1657年)に発生した「明暦の大火(めいれきのたいか)」と呼ばれる江戸の大半が焼かれた大火災から復興してきた江戸と、京都、会津あたりが舞台になってます。

徳川家綱という人は、それまでの武力に頼った政治(武断政治というらしい)から、そうでない政治(文治政治というらしい)への切り替えを非常にすすめた人だそうで、そのあたりも、渋川春海のような学に秀でた方が重用されて、歴史的改暦が実現した要因の一つなんでしょうね。
これを継いだ徳川綱吉は、さらにこの非武力優先の政策を進め過ぎたのか、こじらせたのか、有名な「生類憐みの令」を制定したり、いろいろとのちに悪政と呼ばれる政治をおこなうようになったらしいのですが、本作では渋川春海の改暦を実現させてくれたくらいなので、きっとそんなに悪い人ではなかった、と思いたい。

そのような時代背景の中、主人公 渋川春海が改暦に向けて奔走する姿が延々と描かれる…かというと、そうでもなくて、前半、そうですねぇ、上巻の3/4くらい?4/5くらい?かなぁ?までは、改暦に挑むことになるまでの春海の紆余曲折が描かれてまして、ぶっちゃけ、そこまでは「いつ改暦に挑むん?」というくらい改暦出てこないんですが、それが改暦に全く関係ないかというとそんなことはなくて、それはそれでいろいろとのちに効いてきます。

そもそも、改暦するといっても、そういう仕事があらかじめ用意されているわけではなくて、春海もきちんと違う仕事があります。最初は。
で、その仕事や、春海が興味を持っているものが、のちに改暦する際の暦法作りに結びついていくのですが、冒頭に言った通り、暦(こよみ)を作るのに、地球の自転・公転とか、太陽、月、天体とか、算数とか、めっちゃ必要になるというか、そういうものを使って作るんですね、暦って。

これまでそういうことを考えたことがなくて、本作を読んで知ったんですが、なるほど、確かに考えればそうなるのかなと思いつつ、昔の人って偉大だなぁと改めて思います。
だって、今でこそ、天文学なんて学問の分野があるけども、当時は天文学なんてなくて、むしろ彼らがやった、研究というか、検証というか、観測というか、そういうものがきっと礎(いしずえ)になったんだと思うし、今のような機械はないわけで、そういう状況の中、新たな暦法を作るって、どんだけ計測とか計算とかしまくったのかと。コンピュータないですからね。しかも、計算式的なものも今ほど確立されてなく、きっと、気の遠くなるような回数の計算をしまくったんだろうなぁと思います。

そんな感じなので、まあ、あれですね、春海は理系ですね。バリバリの理系。
実は管理人も工学部出身なので理系なんですが、もうその単語を忘れかけていた「加減乗除」とか「和算」とか出てきて「うわぁ」ってなりました。算数ってそんなに楽しいか?

改暦に挑むようになっても、まあ予想通り容易にそれは成し遂げられず、紆余曲折あるんですが、そもそも、改暦って、なんとなくそんな難事にない印象があったのですが、よく考えたら影響範囲が凄いのと、もう国家事業なので、やろうとしてることの規模が凄いのと、ステークホルダー(利害関係者)的問題も大いにはらむ(暦というのは神仏的扱いで、元々、朝廷預かりみたいなものだったらしいのに、それを非公家の人で、やいのやいのやってるのもまた面倒)ので、春海一人でできるわけもなく、様々な人が登場するんですが、これがまた、きちんと実在した人物達で、凄い人ばっかりで、ニッチなところなのかもしれないですが、非常に歴史の勉強になりました。

春海が関わった人物に、日本全国を行脚した風の時代劇が人気を博したあの水戸のご老公もいるのですが、管理人が知らない偉人はまだまだたくさんいますね。
そういう人達との、出会いや別れを繰り返して、春海は改暦の実現に向けて進むんですが、そうですね、特に、偉人達がそれぞれの想いを春海に託して逝ってしまうところあたりは、偉人達の想いが伝わるとともに、春海の想いもどんどん熱を帯びる感じがあって、都度、胸にグッとくるものがありました。これは本作の見どころの一つかなと思います。春海がわりとよく泣くので、飲みながら読んでいたことで感情が高ぶって管理人が実際に泣けた時もありましたねぇ。

そして、もう一つは春海と生涯を添い遂げる人との話がなかなかに見ものです。
本作で描かれるその部分のストーリーって、実際そうなんですかね?
管理人、読了後にググったものの、そこの真偽は見つけられず、どなたかご存知でしたら教えて欲しいです。
なんかドラマチック過ぎる流れが作品を通してあるうえに、最後の最後は「マジ!?」ってなりまして、未だに「マジ!?」ってなったままなので。
本当だとしたら、本当に凄いんだけど、あれは冲方丁さんの創作かなぁ。

ということで、今回も勝手にわーわー言っただけなので、どれほど本作の面白さが伝えられたかわからないですが、れっきとした史実を伝えた話で、今の生活に欠かせない暦(こよみ)が作られてきたさまをうかがい知りつつ、偉大なる先人達の暦作りにかけた情熱に目頭を熱くできる名作だと思います。戦(いくさ)や革命だけが歴史の面白さではないなぁと改めて思えました。是非読んでみてください。

あ、そうだ、岡田くんと、宮崎あおいさん出演の映画「天地明察」も観てみないとなぁ。
それも、観たらここにレビューを追加しますかねぇ。楽しみだ。

歴史には浪漫がある。

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